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文献詳細

雑誌文献

生体の科学16巻4号

1965年08月発行

文献概要

論述

輸尿管の興奮発生とその伝導

著者: 小林惇1

所属機関: 1広島大学医学部生理学教室

ページ範囲:P.177 - P.185

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 腎臓において生成された尿は腎盂に集まり,ここより細長い中腔の輸尿管を経て膀胱に至ることは周知の通りである。輸尿管は,組織学的には管の内面を覆う粘膜,輪走および縦走の平滑筋よりなる筋層,および外膜から成り立つているが,この平滑筋の収縮によつて,尿は腎盂より下位輸尿管さらには膀胱へと運搬される。輸尿管の収縮は,比較的長い時間間隔をおいて周期的に腎盂に始まり,その伝導速度もゆつくりしている等の事実のために,平滑筋における興奮伝導のよい研究材料として古くEngelmannの時代から研究されてきた1-6)。Bezler7)は輸尿管の歩調取り部はその腎端にあつて,興奮は常にこの部から始まると考え,この部位に大きい表面電極をおくことによつて緩除な立上り相をもつたいわゆる歩調取り電位を記録した。この様に歩調取り部が局在しており,興奮波がこの部から組織全体に伝播するという様式は,心臓の興奮伝播様式と比較して非常に興味深い。さらに輸尿管の活動電位は,腸や子宮筋などの他の平滑筋と異なつて,スパイク波に続く長いプラトー相を有しており,その波形はむしろ心筋の活動電位波形に似ている。これらの事実は,輸尿管における興奮の発生とその伝導とについて,新たな角度から研究を試み,その結果を総合し考察を加えることの意義を痛感させた。
 ここでは主として,輸尿管歩調取り部の興奮,その伝導速度,および活動電位の波形などについて筆者らの研究を中心に述べることとする。

掲載誌情報

出版社:株式会社医学書院

電子版ISSN:1883-5503

印刷版ISSN:0370-9531

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