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文献詳細

雑誌文献

生体の科学16巻5号

1965年10月発行

文献概要

巻頭言

境界領域での研究について

著者: 菊地吾郎1

所属機関: 1東北大学

ページ範囲:P.209 - P.209

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 物理学や化学にくらべると,生物科学の領域はいかにも広大である。医学,農学なども広い意味では生物科学であるから,まさに広大無辺であり,研究の対象も方法も随分かけはなれたものが共存している。いわば生物科学の研究者は,まことに大きな自由度を持つた世界に住んでいることになる。
 自由度が大きいことは,それだけ研究者に独創的な研究の可能性が約束されていることであるが,反面では,その自由度があまりに大きいために,生物科学はまだ一つの原則によつて統一された学問体系にはなつていないきらいがある。言うまでもなく,生物科学が本当にその名前にふさわしいものになるためには,各分野での研究ができるだけ早く共通の原則によつて綜合され,どの分野でも共通の評価の尺度が通用するようになることが望ましいのであるが,現在の段階では,実際に研究の現場に立つて,当面する研究を主体的に自己評価しながら進めて行く場合には,必ず,個別と一般,というむずかしい問題に突き当る。たとえば基礎医学と臨床医学にしても,それらが立つているイデオロギーは必ずしも質的に同じではないし,また生化学と生物学は最近接近したとは言つても,その間にはやはり相当の距離があるのが実情である。特に境界領域に属する仕事の評価ということになると,個人個人の生物学的あるいは生化学的関心の度合によつて,各人各様の物差しを勝手に振りまわしているようなところがある。

掲載誌情報

出版社:株式会社医学書院

電子版ISSN:1883-5503

印刷版ISSN:0370-9531

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