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雑誌目次

雑誌文献

生体の科学17巻2号

1966年04月発行

雑誌目次

巻頭言

生物物理学の国際組織

著者: 小谷正雄

ページ範囲:P.53 - P.53

 自然科学のいろいろの専門分野について,国際会議の開催,その他研究上の国際協力を推進するための機関として国際学術連合(International Scientific Union)が作られている。生物学一般については国際生物科学連合(IUBS),生理学については国際生理科学連合(IUPS),物理学については国際純粋および応用物理学連合(IUPAP),といつた具合である。これらの,学術連合は各その加盟国をもち,加盟国から分担金を払つているが,さらにこれらの学術連合が集つて国際学術連合会議(lnternational Council ofScientific Unions,I. C. S. U.)を作つており,国際地球観測年(IGY),国際生物学プログラム(IBP)などの協同研究活動はこのICSUが行なつているのである。
 さて,ICSUに属する国際学術連合は昨年まで14であつたが,今年1月5日から11日にわたつてインドのボンベイで開かれたICSUの第8回総会で,生物物理学が第15番目のUnionとして認められた。公式の名称はInternational Union of Pure and AppliedBiophysics,IUPABとなると思われる。なお,同時に提案された栄養科学をUnionに認める件は投票の結果否決された。

総説

シナップス前抑制と樹状突起性抑制

著者: 古河太郎

ページ範囲:P.54 - P.65

 緒言
 Frank & Furotes(1957)はネコの二頭半腱様筋に刺激を与えるとき,腓腹筋の運動ニューロンの単シナップス反射に特殊な抑制がおこるのをみた。すなわちその当時すでによく知られていたシナップス後抑制(postsynaptic inhibition)とことなり,この抑制にさいしては当該運動ニューロンの細胞内部から抑制性シナップス後部電位(IPSP)が記録されず,またその細胞の興奮性を直接刺激により検査する場合にも何ら興奮性の低下を検出することができなかつた。これらの点から通常のシナップス後抑制とことなつて抑制の作用部位は恐らく単シナップス反射のシナップス前線維にあると推測し,シナップス前抑制(Presynaptic inhibition)と呼んだ28)。この哺乳類中枢神経におけるシナップス前抑制についての研究はその後Ecclesの研究室およびその他2,3の場所で詳細に行なわれ,今日ではそれが抑制機序ならびに機能的役割の上からシナップス後抑制とは全然ちがつたカテゴリーに属する抑制として認められるに到つている。またシナップス前抑制は無脊椎動物の神経系についてもその存在が知られている。

呼吸運動の神経性調節—特にその中枢性神経機構について

著者: 福原武彦

ページ範囲:P.66 - P.88

 肺呼吸を営む高等動物の安静時における呼吸運動は呼吸筋群の統合された律動的収縮により維持される。この両筋群に周期的に神経衝撃を送り出す神経機構の局在を明らかにするためにLegallois(1812),Flourens(1851)ら以来多くの研究が行なわれてきた。このように一世紀余にわたる研究にもかかわらず,呼吸中枢の局在,中枢の律動性を形成し,維持する神経機構,およびその調節に関与する機序に関しては今日なお意見の一致がみられない。
 呼吸生理学の研究領域であつかわれる諸問題のうち,この論述では呼吸中枢の局在および神経機構に関する問題を中心に,これに関連する呼吸調節の機序の一部について,これまでの研究ならびに我々自身の行なつた実験成績について述べ,今後の問題の所在を明らかにしてみたい。なお,呼吸調節機序全般に関する論述にはCampbell37),Liljestrand92),Oberholzerら104),Paintal108)Wyss141,144)のものがある。

アンケート・8

「交感神経末端およびその効果器官の作用機構について」

著者: 藤原元始 ,   山元寅男 ,   栗山煕 ,   佐久間昭 ,   後藤昌義 ,   丹生治夫 ,   星猛

ページ範囲:P.89 - P.93

 自律神経系末端,ことに交感神経系末端およびその効果器の形態,機構の解明については最近著しい成果がみられてしるとはいえ,今後に多くの問題が残されています。そこで,次のような形で問題を整理し,ご意見を伺つてみました。
 1.問題提起の発端となつたBurnの説(交感神経末端はむしろコリン作働性であつて,ここで遊離されたAChは神経末端近傍のstoreからノルアドレナリンを放出して効果器に作用するという説),およびその説がこの領域の研究に及ぼした影響,についてどう考えられるか
 2.Burn説に対する批判として輸精管近傍では交感神経節が存在するとしう事実が示されてきてしますが,このような姿が交感神経全般について考えられるかどうか。また,この考え,あるしはBurnの考えを受け入れるにしても,従来の教科書的な交感神経系末端の姿は大きな訂正を必要としますが,どのようなものとして交感神経系末端をとらえなおしたらよいでしようか
 3.純粋に薬物に対する作用の違いから交感神経効果器では,a-受容器とβ-受容器を考える立場が支配的ですが,そのような整理の仕方に対して,どのような考えをおもちですか
 4.交感神経末端および効果器の作用機構をさらに解明するために,今後どのような研究方法,道すじをとつていつたらよいでしようか

交見 「生理学者は生化学者に何をのぞむか」/「生化学者は生理学者に何をのぞむか」

生理学の協力を,他

著者: 丸山工作

ページ範囲:P.94 - P.97

 「生化学者は生理学者に何をのぞむか」このような題でなにかかけとのおすすめをいただきましたが,こまつたことに,わたくしは,"生化学者"ではありませんので,ほんとうはその資格をもちあわせてないわけです。けれども,いまのように,とりどりの分野の出身者が生物学のいろいろな面から研究をおこなつているときに,あまり規格をはめるようなレッテルをつける方がおかしいのではないでしようか。とすれば,"生化学的手法"をおもにつかつている研究者のひとりが,いわゆる"生理学的手法"をつかつておられる研究者の方々への希望といつたものをのべてみたいとおもいます。
 わたくしの認識がかたよつているとおもいますが,"生理学"関係の方々は,ひとつには,電気刺激であるとか,機械的な力を測定するとかの装置のくみたてと,微細で微妙な手技によろこびとほこりをつよくもつておられ,他方では,細胞とか組織とか"手つかず"の生きた状態というものに執着されているようにみえます。いずれもすぐれた点にはちがいありませんが,あまりつよすぎますと,名人芸的な気持であるとか,生きていることの神秘性に安住を感ずることにおちいつてしまうおそれがあるでしよう。

文献案内・7

カテコールアミンを研究するにあたつてどんな本を読んだらよいか

著者: 吉田博

ページ範囲:P.98 - P.101

 カテコールアミン(以下CAと略記)は副腎から分泌されるホルモンとして生体機能の調節にきわめて重要であることが知られた後,交感神経末端から分泌されるいわゆるNeurotransmitterもまたCAであることが明白になつた。さらに,中枢神経系においても特定の部位に特定のCAが,たとえば規床下部にはノルアドレナリンが,尾状核などにはドーパミンが,局在することが判明し,中枢神経機能にも重要な役割を果していると考えられるようになつてきた。このようにCAの生理的重要性が拡大され認識されるにつれ,研究者数も,発表論文数も,そして又CAに関する論文の掲載される雑誌の幅も非常に増加し,薬理,生理,生化学,解剖,また,内分泌,循環,精神々経科関係ときわめて広範にわたつている。が,あえてもつとも多数のCA関係論文の発表される1〜2誌にしぼるとすれば,J. Pharmacol. Exper. Therap. とActa Physiol. Scandをあげたい。前者はNIHを中心としたアメリカのCA研究グループ,後者はEuler,Hillarp,Carlssonらの北欧グループの論文が発表される。この2つは世界のCA研究の中心として見逃すことのできないものだと思われる。さらに速報雑誌のLife Sciencesも最近重要性を増しつつあり今後注目する必要があるかもしれない。

抄録

「生体運動機構」セミナー(2)

著者: 渡辺静雄 ,   江橋節郎 ,   野々村禎昭 ,   東尚巳 ,   丸山工作 ,   ,   ,   ,   ,   川口四郎

ページ範囲:P.102 - P.103

□ 構造蛋白の相互作用とその形態
 筋収縮におけるマグネシウムの役割り
 マグネシウムの筋収縮に対する効果についての解答というよりはむしろ疑問を提出しようと思う。
 筋の研究の初期においてA. Szent-GyörgyiはATPによつて惹き起こされる筋モデルの収縮に対するマグネシウムの阻害作用とともに促進作用をも強調した。最近,丸山(1962)および安井(1965)に,阻害はMgがある濃度に達するとかなり突然におこることを示した。そして彼らは,それがおそらく二つの異なる現象であり,一つはMg-ATP複合体の濃度が最適値より多くなつたための単純な阻害であり,他はミオシンBの可溶化であろうと考えた。後者は非常に低い濃度のカルシウムによつて抑制されるが,前者による阻害を逆転するためには比較的高濃度のカルシウムが必要である。

基本情報

生体の科学

出版社:株式会社医学書院

電子版ISSN 1883-5503

印刷版ISSN 0370-9531

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