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文献詳細

雑誌文献

生体の科学18巻2号

1967年04月発行

文献概要

主題 視覚

網膜の微細構造

著者: 山田英智1

所属機関: 1九州大学医学部解剖学教室

ページ範囲:P.54 - P.66

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 網膜はいうまでもなく感覚器としての光の受容装置として,本質的役割を果す部位である。発生学的には脳の側壁の膨出としてできる,いわゆる眼杯に由来するから元来は中枢神経の一部と考えうるものであり,事実その構造は完成されたものでもなお,中枢神経組織と同様の構築を示すのである。その意味で,他の感覚器とは基本的に異なつていることをまず注意しておく必要がある。つぎに,中枢神経組織と同様ではあるが,この組織を構成する神経要素,神経膠組織,血管などはそれぞれ特有な分化をしていることはいうまでもない。しかし,これらの構成要素は他の中枢神経の部位にくらべると,その配列が規則正しく,相互の連絡も比較的簡単であり,またその種類も比較的少ない。したがつて,他の中枢神経の部位にくらべれば,その構造も,生理的活動などもこれを分折する際にやや便利であるといえよう。網膜で得られた知見は他の中枢神経にもあてはめることも可能であり,研究の対象として興味があると共にまた便利であるといい得る。おそらく,このような理由もあつて,網膜は現在まで電子顕微鏡によつて最もよく検索された組織の一つといつてもよいであろう。
 網膜の構造に関する知識は,その大部分は1850年代以降のすぐれた組織学者の研究によつてうちたてられたものである。

掲載誌情報

出版社:株式会社医学書院

電子版ISSN:1883-5503

印刷版ISSN:0370-9531

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