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文献詳細

雑誌文献

生体の科学18巻3号

1967年06月発行

文献概要

主題 視覚

色覚の網膜機序

著者: 冨田恒男1

所属機関: 1慶応義塾大学医学部生理学教室

ページ範囲:P.114 - P.125

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 色覚についてはNewton以来多数の著明な学者による異なつた学説があるが,代表的なものは何といつてもYoung-Helmholtzの三色説とHeringの反対色説とである。前者はYoung(1802)によつて基本概念が出され,これがHelmholtz(1852)により発展させられたもので,網膜内に波長感度を異にする赤・緑・青の3要素があり,それらが興奮する程度に従つてすべての色覚を説明しようとするものである。また,Hering(1878)による反対色説というのは,赤・緑・青の他にさらに黄の要素を加え,しかも赤と緑,また黄と青とはHeringが赤緑物質および黄青物質として表現しているような対の関係にあり,それらの物質の分解がそれぞれ赤および黄の感覚に,そして合成がそれらの反対色たる緑および青の感覚に対応すると考える。なお色を伴わない単なる明暗の感覚に対しては,白黒物質の分解,合成を考えるわけである。
 上記の2学説は,その後これを生理学的に批判するための直接的な手段もないままに,どの成書にも代表的な2大学説として併記されて今日に至つた。しかしながら最近の生理学実験の微細技術と電子工学とのめざましい進歩は約1世紀にわたり見送られてきた両学説に対する直接的な批判実験を可能となしつつある。以下(1)神経節細胞レベル(2)双極細胞レベルおよび(3)視細胞レベルの3者について最近の進歩を述べる。

掲載誌情報

出版社:株式会社医学書院

電子版ISSN:1883-5503

印刷版ISSN:0370-9531

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