文献詳細
文献概要
巻頭言
日本の微生物学
著者: 池田庸之助1
所属機関: 1東京大学
ページ範囲:P.165 - P.165
文献購入ページに移動 わたくしは元来,応用微生物畑で育つた人間である。たまたま15年ほど前に微生物遺伝学の担当を命ぜられ,以来,東大応用微生物研究所で基礎とも応用ともつかない仕事をしてきている。そしていまある年齢に達し考えることは,日本の微生物学の現状と将来である。
わたくしは,日本の微生物学はある片寄りをもちつつも健全に育つてきた方だと思う。微生物学誕生の初期にわれわれの先輩が果たしたはなばなしい業績は,いまもなお世人の記憶になまなましく残つているし,また戦後わが国の微生物学者によつてなされた新抗生物質の発見やジベレリンの発見は世界の注目をあびた。そしてこれらの業績を通じ日本の微生物学は二つの性格をもつようになつたと,わたくしは思う。その第一は,微生物学といえば医学,農学につながる応用の学問であるという偏見であり,第二は"もの"(病原微生物や微生物生産物)の発見を通じて微生物学に貢献しようとする傾向である。この二つの性格のうち,"もの"を見つけるという伝統は日本のお家芸でもあり,今後とも育ててゆきたいことである。
わたくしは,日本の微生物学はある片寄りをもちつつも健全に育つてきた方だと思う。微生物学誕生の初期にわれわれの先輩が果たしたはなばなしい業績は,いまもなお世人の記憶になまなましく残つているし,また戦後わが国の微生物学者によつてなされた新抗生物質の発見やジベレリンの発見は世界の注目をあびた。そしてこれらの業績を通じ日本の微生物学は二つの性格をもつようになつたと,わたくしは思う。その第一は,微生物学といえば医学,農学につながる応用の学問であるという偏見であり,第二は"もの"(病原微生物や微生物生産物)の発見を通じて微生物学に貢献しようとする傾向である。この二つの性格のうち,"もの"を見つけるという伝統は日本のお家芸でもあり,今後とも育ててゆきたいことである。
掲載誌情報