icon fsr

雑誌目次

雑誌文献

生体の科学18巻5号

1967年10月発行

雑誌目次

巻頭言

学問の自由と研究費

著者: 藤村靖

ページ範囲:P.221 - P.221

 学問に国境はなく,大学には自治がある。これは社会一般のいろいろな実状からみれば,現実離れのした虫の良い話のようであるけれども,やはり学術の要求する最低限必要な環境条件だと思う。いわばこれは大学における学問の憲法である。
 学問は本質的に欲張りなものであり,勝手であり,贅沢である。それは既成の知識のすべてを自由に使うことを当然と心得,しかも何らの権威に束縛されることをも拒否する。それは正に自由の精神そのものであるといつてもよい。それ故にこそ,学者は生活の不自由を厭わず,世俗の権力につかない風を持してきた。

主題 GABA(1)

BIOCHEMICAL-PHYSIOLOGICAL CORRELATIONS IN STUDIES OF THE γ-AMINOBUTYRIC ACID SYSTEM

著者: ,  

ページ範囲:P.222 - P.247

 The first report of the presence of γ-aminobutyric acid(γABA)in the vertebrate central nervous system(CNS)was made in 195049)

解説講座 対談

糖の輸送について(2)

著者: 星猛 ,   酒井文徳

ページ範囲:P.248 - P.251

 非電解質輸送のNa依存性の本態
 星 もう一つそういう非電解質の輸送について興味のあることはPAH分泌などもNa-dependentであるということです。Csákyがいっているように,非電解質の能動輸送にNaが必要だということは,Naが細胞の中に入つて細胞の中のNa濃度がある程度あがることが必要なのだとの見解がありますね。そうすると膜のNa-K依存性のATPaseが働いて……。遊離されたエネルギーによつて一つの"general pump"が働くと考えるわけです。そのポンプのところに入つてきたものは何でもかんでもみんなnon-specificにactiveに出すというわけです。輸送系のselectivityを決定するのは,その段階のもう一つ外側にselectiveな透過性,またはcarrier機構を考えれば,特殊のものだけがuphillに輸送されることが説明できるわけです。これに類したことがまた最近Ussingによつて報告されていますが,蛙の皮を高張液で処理しますと,蔗糖を一見,能動輸送のように体内にとり入れるようになることが判つてきました。Ussingはこれをanomalous transportと呼んでいますが,同様の機構を考えているようです。

実験講座 細胞内成分の分画・2

ミトコンドリアのsubfragmentsの調製法

著者: 小田琢三 ,   林英生

ページ範囲:P.252 - P.260

 Ⅰ.まえがき
 ミトコンドリア(糸粒体,mitochondria)は好気的細胞の細胞質内に存在する呼吸を営む小器官である。それは細胞内代謝産物の終末酸化の場であつて,クエン酸回路と電子伝達—酸化的リン酸化系をはじめ,それに関連したアミノ酸や脂肪酸などの代謝系を含んでいる。細胞質内において他の構成要素と構造的なつながりがなく遊離して存在するために,適当な方法を用いれば細胞内における構造と機能を保持したまま容易に細胞外に取り出して,cell free systemにおける代謝過程を調べることができる。HogeboomとSchneiderら1)(1948)がミトコンドリアの分離法の基礎を築いて以来,ミトコンドリアの構造と機能は他の細胞成分に比し最も広く詳細に調べられてきた。その初期の段階ではミトコンドリア全体あるいはそれから抽出した酵素ないし酵素系について研究されたが,Greenら2)(1956)やLehningerら3)(1956)がミトコンドリアを破壊して,電子伝達あるいは酸化的リン酸化(ATP合成)能のある亜ミトコンドリア粒子(ETP, ETPH,およびジギトニン粒子)を分離し,さらに電子顕微鏡の導入によつて,ミトコンドリアのサブフラグメントの構造と機能の研究が盛んとなつてきた。

アンケート・17

アロステリック効果について

著者: 水上茂樹 ,   徳重正信 ,   志村憲助 ,   長谷栄二 ,   菊地吾郎

ページ範囲:P.261 - P.263

 生命現象のすべてを貫く合目的性が,分子レベルでの素反応の研究を足掛りとして今や代謝を中心とした自動制御の問題に集約して論じられているように思われます。それらの問題は生化学や生物物理の研究者だけでなく,生理学・薬理学方面の人々にも強い興味をひき起こしています。代謝調節の一つのメカニズムとして,特にアロステリック効果が有名になつていますが,この問題について自由なご意見を伺いました。
 1.現在,どのようなアロステリック蛋白をご研究になつていますか。ある いはどのような系に興味を持つていますか(解説的・啓蒙的に)。

文献案内・13

発生,分化の生化学的な研究をはじめるにあたつてどんな本を読んだらよいか(1)

著者: 岡田節人

ページ範囲:P.264 - P.267

 編集部からのご依頼のテーマの意味には,いろいろ多面的なものが含まれているようである。紹介を依頼されているのは「発生生物学」の入門書ではない。発生,分化の「生化学的研究」のためのものが特に要求されているし,また,「研究をはじめるにあたつて」という条件もついている。したがつて,いま研究をはじめようとしておられる方が,過去にどんな経験と素養をもつておられたかによつて,おすすめする品目もがらりと変つてくるはずである。しかも,現在の発生生物学は,各自の経験と興味に応じて,恐しいほどに左右されるだけの多様性をもつているから,各個人については,あるいは適切な助言も可能かもしれないが,一般的なものといつてはほとんど不可能に近いような状勢ではないだろうか?
 極端な例を考えてみよう。わが国では発生とか分化とかいつた問題は,理学部の生物学系(それも,主として動物学系)で,専門として教育される。これらの教科では,今までのところ,卵や発生中の胚の詳細な形態学的事実が中心となるのがふつうである。いま,こうした素養をもつ方が,発生,分化の生化学的研究をはじめたい,と考えられるなら,まず手にすべき本は,生化学や分子遺伝学の基礎的な参考書ということになろう。この逆の場合だつてありうる。

抄録

「小胞体」セミナー(3)—(その構造,機能および発生について)

著者: ,   ,   ,   ,   田代裕 ,   森本孝 ,   永田 ,   松浦 ,   渡辺陽之輔 ,   山田英智 ,   山元寅男 ,   山本敏行 ,   安澄権八郎

ページ範囲:P.268 - P.272

 肝細胞の分化過程における小胞体の新生
 G. Dallner,P. Siekevitzとの共同研究によつて,白ネズミ肝細胞の分化過程の最終局面は,出生時をめぐる短期間の間に訪れ,形態的ならびに生化学的変化を併せ持つということが明らかになつた。すなわち出生前3日から生後8日の間である。
 形態的変化としては,小胞体ことに滑面小胞体の急速な発現,膜に附着したポリゾーム間の間隔の増加,滑面小胞体とグリコーゲン顆粒との密接な連合(これはよく分化した細胞の特徴で,出生時またはそれ以前にはみられない)が急速にあらわれることがあげられる。すべてこれらの変化は,生後2日から3日の間に集中している。

基本情報

生体の科学

出版社:株式会社医学書院

電子版ISSN 1883-5503

印刷版ISSN 0370-9531

雑誌購入ページに移動

バックナンバー

icon up
あなたは医療従事者ですか?