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文献詳細

雑誌文献

生体の科学19巻1号

1968年02月発行

文献概要

実験講座 細胞内成分の分画・4

葉緑体の調製法

著者: 田川邦夫1

所属機関: 1大阪大学医学部生化学教室

ページ範囲:P.34 - P.38

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 光合成研究で最初に緑葉の無細胞標品を用いて,成功を収めたのはHill1)である。すなわち,約30年前Hillはハコベやオドリコソウから本質的には現在用いられているのと同じ方法で葉緑体標品を得て,適当な酸化剤を加えて光照射すれば酸素が発生することを観察した。ところがこのHill反応は光合成的炭酸固定の一部であるかもしれないが,生体内で行なわれる反応とは程遠いものであることが,その後十数年間の研究で示され,光合成反応には葉緑体だけでなく細胞全体が必要だという誤 つたことが結論されていた。そのため,光合成研究のための葉緑体の生化学的単離調製ということはあまり重視されない時期があつた。
 1954年になつてArnonら2)によつてホウレンソウから単離した葉緑体標品を用いて光りん酸化反応および炭酸固定反応が証明され,葉緑体は光合成の完全な単位であることが確立された。その後,光合成細菌からも光りん酸化反応を行ない得るクロマトフォア標品も得られるようになり光合成の研究にはたいていの場合ホウレンソウの葉緑体かクロマトフォアが用いられるようになつた。最近では葉緑体は核外自己増殖系としてミトコンドリアと並んで遺伝学的にも研究されるようになつてきた。この分野では高等植物は遺伝生化学的には取り扱いにくいので,藻類やユウグレナなどから葉緑体標品が単離されている。ここでは光合成反応を中心にして葉緑体標品の調製法について述べていくことにする。

掲載誌情報

出版社:株式会社医学書院

電子版ISSN:1883-5503

印刷版ISSN:0370-9531

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