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雑誌目次

雑誌文献

生体の科学19巻2号

1968年04月発行

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巻頭言

基礎医学の研修

著者: 三浦義彰

ページ範囲:P.49 - P.49

 研修医制度の是非が論ぜられている。研修という言葉はこの場合臨床医学を実地に即して学ぶことである。それでは基礎医学はどうなのだろう。講義といわゆる学生実習で充分なのだろうか。実際の研究現場で訓練する必要は医学生一般については必要がないのだろうか。
 昨年久方ぶりに米国東部の医学校をまわつてみて感じたことは臨床のBedside teachingに対して基礎側のLaboratory workの充実といつた考え方の進展である。

主題 Polysaccharide・2

糖脂質の諸問題

著者: 飯田静夫

ページ範囲:P.50 - P.61

 Ⅰ.まえがき
 糖脂質は糖を含む複合脂質の総称であるが,糖脂質が一つの研究分野として確立されたのはごく最近のことである。脳のセレブロシドはすでに19世紀末にTudichumによつて知られたが,その後は1927年のLandsteiner1)やWalz2)による新糖脂質の発見(後にKlenkによつてガングリオシドと命名される31))や1933年のBlix3)によるセレブロシド硫酸の研究などが目立つ程度で,この間のKlenkの精力的な研究にもかかわらず研究の進展は比較的ゆるやかであつた。これは一つには研究の対象が複合脂質でありその物理化学的性状から水に溶げたり,溶けなかつたりすることなどによる技術的困難さが一因をなしていたと考えられる。また糖質化学と脂質化学の境界領域に当る糖脂質の概念が広く知られていなかつたために,今日あらためて読み返してみると明らかに糖脂質と思われる性質を持つた物質を分類のできないあいまいなものであるかのように記載している文献もいくつかある。
 1950年代から多くの糖脂質の発見とその化学構造の決定が引き続き,さらに1960年前後から糖脂質の生合成,分解の過程について数多くの実験が行なわれ,一応その代謝についての概念を得ることができるようになつた。

結合組織の素物質としてのムコ多糖—タンパク質複合体—分子進化,分子分化,生合成

著者: 鈴木旺

ページ範囲:P.62 - P.75

 Ⅰ.はじめに
 皮膚,軟骨,腱,大動脈など一般に動物の結合組織(connective tissue)といわれる部分は細胞外基質(matrixあるいはground substanceと呼ばれ複雑な多糖とタンパク質より成る複合体)を豊富に含んでおり,各細胞はそれら豊富な基質にとり囲まれて存在している。したがつて,結合組織としての性質や機能を直接支配しているのは,細胞というよりはむしろ細胞外にある基質高分子成分の性質である。たとえば,結合組織の強さ,柔らかさをはじめ,組織内でのカルシウムの平衡と沈着,物質透過,水の保持などに果たす基質の役割は大きい。そしてこのような複雑な高分子成分を合成し分泌する働きをする点が,結合組織の細胞に共通した特徴ということができる。
 これら結合組織は一つの動物個体についてみても,構造的,機能的に非常に異なるものが分布しているが,これを広く生物界全般について比較してみると,ひとくちに結合組織といつても,それらの構造や機能にはかなりの巾がある。このことはまた,結合組織を構成する細胞外基質成分の多様性をも示唆している。すなわち,結合組織の"素物質"の構造や生合成を研究することは,とりもなおさず,この特別な組織の分化や進化に伴う細胞の合成分泌機能の変化および基質高分子の構造変化の様相を明らかにすることにほかならない。

実験講座

位相差顕微鏡と干渉顕微鏡(Ⅴ)—干渉顕微鏡とその利用法

著者: 水平敏知

ページ範囲:P.87 - P.99

 干渉顕微鏡の生物・医学的試料への利用とそれを用いての試料の位相差量,質量の測定
 前号でのべたように,干渉顕微鏡は位相差顕微鏡の有する宿命的な欠点であるいわば不完全な位相差像(haloの発生を含めて)から完全な位相差像の再現を実現したと同時に,条件がそろえば試料内の位相差量や質量の測定を可能にしたすばらしい顕微鏡である。したがつて,その用途を二つに分けて考えることができる。その第一は位相差顕微鏡と同様に無染色透明な試料の観察であり,第二は測定顕微鏡としての用途である。

細胞内成分の分画・5

神経終末・シナプス小胞・シナプス膜の分離法

著者: 黒川正則

ページ範囲:P.76 - P.85

 神経細胞体を出た軸索は次第に枝わかれしたのち,その末端部において径0.5〜4μのふくらみ(神経終末ボタン)を作り,他の神経細胞体または樹状突起との間でシナプスを形成している。神経終末の大きさや数については,1930年ころから主として鍍銀組織切片を材料とした計測値が報告されているが,動物や細胞の種類が少数のものに限定されているので,系統的なことはわからない。だいたいの目安のためにネコ(成熟)の脊髄前角細胞について計測された最近の報告15)から引用すると,100μ2あたりの終末ボタン数は細胞体表面で11.6個(S.E.±1.6),樹状突起の表面では7.16個(S.E±0.28)である。径は2μ以下のものがほとんどを占め90.7%,2.1〜4.7μのもの8.7%,4.8μ以上のもの0.5%である。また樹状突起をふくめた神経細胞全表面積の中で,50〜70%がシナプス接合にあてられており,グリア細胞とその突起によつておおわれているのは,のこりの50〜30%と推算されている。神経細胞膜のこのような特徴は,細胞分画法によつて神経系の膜系をとりあつかうとき,とくに考慮しておく必要がある。
 中枢神経系(多くの場合には哺乳類の大脳皮質)からふつうの分画技術を用いて,神経終末ボタンをとりだせることがはつきりしたのは1960〜61年頃である。

基本情報

生体の科学

出版社:株式会社医学書院

電子版ISSN 1883-5503

印刷版ISSN 0370-9531

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