文献詳細
文献概要
主題 Polysaccharide・2
糖脂質の諸問題
著者: 飯田静夫1
所属機関: 1東京大学医学部生化学教室
ページ範囲:P.50 - P.61
文献購入ページに移動 Ⅰ.まえがき
糖脂質は糖を含む複合脂質の総称であるが,糖脂質が一つの研究分野として確立されたのはごく最近のことである。脳のセレブロシドはすでに19世紀末にTudichumによつて知られたが,その後は1927年のLandsteiner1)やWalz2)による新糖脂質の発見(後にKlenkによつてガングリオシドと命名される31))や1933年のBlix3)によるセレブロシド硫酸の研究などが目立つ程度で,この間のKlenkの精力的な研究にもかかわらず研究の進展は比較的ゆるやかであつた。これは一つには研究の対象が複合脂質でありその物理化学的性状から水に溶げたり,溶けなかつたりすることなどによる技術的困難さが一因をなしていたと考えられる。また糖質化学と脂質化学の境界領域に当る糖脂質の概念が広く知られていなかつたために,今日あらためて読み返してみると明らかに糖脂質と思われる性質を持つた物質を分類のできないあいまいなものであるかのように記載している文献もいくつかある。
1950年代から多くの糖脂質の発見とその化学構造の決定が引き続き,さらに1960年前後から糖脂質の生合成,分解の過程について数多くの実験が行なわれ,一応その代謝についての概念を得ることができるようになつた。
糖脂質は糖を含む複合脂質の総称であるが,糖脂質が一つの研究分野として確立されたのはごく最近のことである。脳のセレブロシドはすでに19世紀末にTudichumによつて知られたが,その後は1927年のLandsteiner1)やWalz2)による新糖脂質の発見(後にKlenkによつてガングリオシドと命名される31))や1933年のBlix3)によるセレブロシド硫酸の研究などが目立つ程度で,この間のKlenkの精力的な研究にもかかわらず研究の進展は比較的ゆるやかであつた。これは一つには研究の対象が複合脂質でありその物理化学的性状から水に溶げたり,溶けなかつたりすることなどによる技術的困難さが一因をなしていたと考えられる。また糖質化学と脂質化学の境界領域に当る糖脂質の概念が広く知られていなかつたために,今日あらためて読み返してみると明らかに糖脂質と思われる性質を持つた物質を分類のできないあいまいなものであるかのように記載している文献もいくつかある。
1950年代から多くの糖脂質の発見とその化学構造の決定が引き続き,さらに1960年前後から糖脂質の生合成,分解の過程について数多くの実験が行なわれ,一応その代謝についての概念を得ることができるようになつた。
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