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文献詳細

雑誌文献

生体の科学19巻2号

1968年04月発行

文献概要

主題 Polysaccharide・2

結合組織の素物質としてのムコ多糖—タンパク質複合体—分子進化,分子分化,生合成

著者: 鈴木旺1

所属機関: 1名古屋大学理学部化学教室

ページ範囲:P.62 - P.75

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 Ⅰ.はじめに
 皮膚,軟骨,腱,大動脈など一般に動物の結合組織(connective tissue)といわれる部分は細胞外基質(matrixあるいはground substanceと呼ばれ複雑な多糖とタンパク質より成る複合体)を豊富に含んでおり,各細胞はそれら豊富な基質にとり囲まれて存在している。したがつて,結合組織としての性質や機能を直接支配しているのは,細胞というよりはむしろ細胞外にある基質高分子成分の性質である。たとえば,結合組織の強さ,柔らかさをはじめ,組織内でのカルシウムの平衡と沈着,物質透過,水の保持などに果たす基質の役割は大きい。そしてこのような複雑な高分子成分を合成し分泌する働きをする点が,結合組織の細胞に共通した特徴ということができる。
 これら結合組織は一つの動物個体についてみても,構造的,機能的に非常に異なるものが分布しているが,これを広く生物界全般について比較してみると,ひとくちに結合組織といつても,それらの構造や機能にはかなりの巾がある。このことはまた,結合組織を構成する細胞外基質成分の多様性をも示唆している。すなわち,結合組織の"素物質"の構造や生合成を研究することは,とりもなおさず,この特別な組織の分化や進化に伴う細胞の合成分泌機能の変化および基質高分子の構造変化の様相を明らかにすることにほかならない。

掲載誌情報

出版社:株式会社医学書院

電子版ISSN:1883-5503

印刷版ISSN:0370-9531

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