icon fsr

雑誌目次

雑誌文献

生体の科学19巻4号

1968年08月発行

雑誌目次

巻頭言

千進法のすすめ

著者: 村地孝

ページ範囲:P.153 - P.153

 千進法という用語が適当かどうかもわからない。要するに,10の3乗を一区切りにする数のかぞえ方をしようではないかという提唱である。
 一十百千万,十万,百万,千万,一億,と進む方式は万進法というべき数え方で,10の4乗ごとに,万,億,兆,京などという字が使われる。これに対して,千進法は,千のつぎの区切りがミリオンで10の6乗,そのつぎがビリオンで10の9乗(ただし米国式)というふうに数える方式である。どちらの方式もそれぞれの歴史的背景をもち,それぞれの合理性を持つているにちがいない。しかし,いまの日本語で,どうしても万進法でなければならない理由は,文学的表現上の必要性以外にはまつたく存在しない。

主題 Polysaccharide・4

リゾチームの作用機作と生理的意義

著者: 大沢利昭

ページ範囲:P.154 - P.166

 卵白リゾチームは比較的分子量の小さい(約15,000)塩基性タンパク質で,現在一次,二次,三次構造が完全に解明された最初の酵素である。さらに最近,一部の基質との複合体のX線解析による研究も行なわれて,酵素タンパクの特異的な酵素作用に関与する構造も明らかにされるに至つた。したがつて卵白リゾチームは酵素の作用機作の研究,あるいはcrystallographerによつて得られた知見をさらに生物物理化学的な,また有機化学的な立場から実証する上で最適の研究材料として,現在この種の研究がきわめて活発に行なわれている。一方リゾチームは自然界には卵白をはじめとして,ヒトや動物の涙液,唾液,血液,乳汁などの体液や各臓器,さらに植物や細菌などにも広く分布していて,その生理的意義の考察また医薬品としての応用も試みられているが,この酵素の加水分解酵素としての作用と生体内での生理的意義との関連は必ずしも明確ではない。本稿では卵白リゾチームの作用機作に関して,現在までに得られた知見を基にした主として生物有機化学的立場からの解説を行なうとともに,リゾチームの生理的意義に関しても若干の考察を加えるが,最近さかんに試みられている臨床的応用などに関しては他稿にゆずりたい。

糸球体腎炎の発現と糖蛋白

著者: 柴田整一

ページ範囲:P.167 - P.179

 近年ポリサッカライドに関する知見が大幅に進歩してきたが,われわれ臨床医学にあるものとしては当然のことながらこの中の生物活性を有する物質に関心が集中する。
 ところで生物活性を有する糖蛋白としては1)酵素(膵臓のリボヌクレアーゼBなど),2)ホルモン(黄体形成ホルモンICSA,濾胞刺激ホルモンFSH,サイロイド刺激ホルモンFSHなど),3)細胞表面物質(赤血球のMN型抗原など)など少数のものが知られているにすぎない。

Sialo-polysaccharideとNeuraminidase

著者: 鶴見膠一 ,   長井靖

ページ範囲:P.180 - P.190

 I.はじめに
 1940年Blix1)は"Studies in Glycoproteins"という論文において糖蛋白の分類を試みている。その中の一つの分類項目として"Sialoproteins"と名づけたものがある。これは,Blixが1936年に顎下腺ムチンの糖質成分の研究中に発見した新結晶状糖質2)―これは後に"sialic acid"と命名された3)―を含む糖蛋白の一群を分類上区別したものであつた。その後,久しくBlixの研究室からsialic acid(シアル酸***)に関する研究の発表がとだえていたが,1952年3)から再び活発な研究発表が行なわれ,シアル酸が糖蛋白のみならず,糖脂質にも広汎に存在することが知られるに至つた。シアル酸を含有することを強調する場合かかる糖蛋白,糖ペプチドを,特にsialoglycoprotein,sialoglycopeptideなどの名で呼ぶようになつた。表題に掲げられた"sialo-polysaccharideという用語は,編集者より与えられたものであつて,シアル酸含有多糖質ということであるが,ほとんどの場合,蛋白質またはペプチドが多糖質と結合した形のものの多糖質部分を指すものである。井上,吉沢は,豚の腸粘膜よりのムチンを蛋白分解酵素で分解してムコ多糖質部を分離したが,これがシアル酸5.5-8.8%含むものであつたことより"sialopolysaccharide"と称した4)

実験講座 細胞内成分の分画・7

動物細胞核分離法および脳細胞核の分別分離法(2)

著者: 加藤尚彦

ページ範囲:P.191 - P.199

 脳細胞核の分別的分離法
 前述のように脳組織はノイロンと3種のグリア細胞が構成要素をなし,ノイロンの軸索をおおう大量の髄鞘(ミエリン)と毛細血管の複雑な網目の中に埋つている。ミエリンはホモジナイズするとき種々の大きさに切れ,核分画の中に混入したり,重層濾過法では重層の境界に集つて障壁をつくり核の沈降をふせぐ。毛細血管も種々の長さに切ねて核に近い比重をもち,核分画に混入する。さらに得られる核標品はノイロン核と3種のグリア核からなり,一様な細胞核群として扱うのでは後述のように生物学的には意味がない。したがつて他臓器に用いる方法はそのまま応用できず,後に述べるような種々の工夫が必要である。

海外だより

ハワイ大学とEast-West Center

著者: 勝木保次

ページ範囲:P.200 - P.204

 ハワイにきて一番驚くことは,われわれのハワイについての知識があまりにも少ないことだつた。われわれはハワイのことをあまりにも知らなさすぎた。眼に入り耳に聞こえるハワイは夢の国であり,楽園である。内地のマスコミはこのように宣伝していた。たしかに私のもつていたハワイのイメージはギターの伴奏によるハワイ音楽と,腰をやたらと振るフラダンスであつた。
 私はすでにハワイを米本土への往き帰りに数回訪れているし,さらに学会で10日近くもワイキキのホテルに滞在したこともあつたので,私なりにかなりの知識をもつていたつもりでいた。ところが昨年9月から当地にきて住んでみると,今までの知識があまりにも貧弱であつたことに驚かざるを得なかつた。

基本情報

生体の科学

出版社:株式会社医学書院

電子版ISSN 1883-5503

印刷版ISSN 0370-9531

雑誌購入ページに移動

バックナンバー

icon up
あなたは医療従事者ですか?