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文献詳細

雑誌文献

生体の科学20巻3号

1969年06月発行

文献概要

主題 発生,分化・3

初期発生の高分子代謝における問題点

著者: 真野嘉長1

所属機関: 1東京大学医学部生化学教室

ページ範囲:P.94 - P.105

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 発生という生物現象を生理化学的に記載する立場は現象を一つの平面にとどまらず,空間的と同時に経時的な高次の各面で考察することが必要である。一方,一つの事象を現象論的に記載するにも量的な面と質的な面とを平行して考察せねばならない。したがつて発生という現象を物質的にとらえるにはその複雑さのために自ずから限度があり,その全般を把握するにはほど遠い話である。
 初期発生とは一般に卵から胞胚期までを指す人が多いが,これは胚としての自主的な発生をはじめる以前の一つの準備段階と理解されているからである。それは嚢胚期以前は核活動が顕著でなく,いろいろな程度で,その代謝が胚固有の遣伝子支配によらない母系遺伝子の影響下にあるとみられるからである。そのほかの理由からも初期発生胚は細胞学的には典型的な独立細胞という形で取り扱うは困難であり,非常に特殊な細胞形態であると認めざるをえない。それは発生現象そのものが分化を経て成体へ至る過程の生活環の一部として,特殊目的のために構成された生態てあるからである。

掲載誌情報

出版社:株式会社医学書院

電子版ISSN:1883-5503

印刷版ISSN:0370-9531

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