icon fsr

雑誌目次

雑誌文献

生体の科学20巻5号

1969年10月発行

雑誌目次

巻頭言

ちかごろ思うこと

著者: 小林龍男

ページ範囲:P.189 - P.189

 ちかごろ大学人が集まると学問の話よりさきに話題にのぼるのは大学紛争のことであるが,それほど大学が曲りかどに立たされていることはたしかである。
 こうした雰囲気のなかでバーゼルの国際薬理学会に出席する途中パリに立寄つたのは7月のはじめ革命記念日の数日前のことであつたが,凱旋門のあたりは例年どおり三色旗で美しく彩られていた。

主題 味覚・1

味覚刺激の受容と味覚の信号

著者: 佐藤昌康

ページ範囲:P.190 - P.202

 Ⅰ.二つの味覚の経路
 哺乳動物の味覚信号が主として二つの経路によつて伝えられることは古くから知られていることである。すなわち舌の前2/3は舌神経—鼓索—顔面神経の経路で伝えられ,後1/3部の味覚は舌咽神経を経由する。他方,ヒトの舌の四基本味に対する感受性は部位によりことなり,舌先部は甘味に,舌縁部は酸味に,舌根部は苦味に敏感である。塩味は舌先部と周縁で一様に感じられる。
 多くの電気生理学的研究では,舌刺激によつて鼓索神経に起こる電気的活動を記録するか,1本の神経線維のインパルス放電を記録する方法が用いられてきた。前者の場合には,定量化のために,神経のインパルス活動を積分回路をとおして平均化し,その出力の高さをもつて応答の大きさをあらわす方法が用いられている1)

ヒトの味覚—味の性質が感覚される機序について

著者: 市岡正道

ページ範囲:P.203 - P.215

 I.はじめに
 今から約30年前,われわれが学生であつたころの生理学では味覚とか嗅覚とかいう感覚についてはあまり詳しく教わつた記憶がない。教科書にもあまり多くのページが割かれておらず,内容も生理学というよりは心理学的なことが多く書かれていた。ところがここ数年来,味覚と嗅覚の研究が活発となり,したがつてそれらに関するわれわれの知識は急速に増加しつつある。
 試みに筆者の耳にした,最近行なわれた学会や集会などを想起してみると次のようになる。1962年,第22回国際生理科学会議(略称ICPS)の衛星学会としてZottermanの主宰によつて嗅覚と味覚とに関する国際シンポジウム(International Symposium on Olfaction and Taste,略称ISOT)が初めて開かれた。以後1965年(於東京),1968年(於New York)と2回に亘つてやはりICPSに前後してISOTが開催された。1971年の第25回のICPSにも衛星学会として第4回のISOTが開かれる予定である。

解説講座 鼎談

Renin-Angiotensin系(1)

著者: 曾我部博文 ,   福地総逸 ,   今井正

ページ範囲:P.216 - P.226

 曾我部(司会) 今日は福地先生,今井先生にrenin-angiotensin系に関する最近の進歩についてお話し願います。このrenin-angiotensin系の研究の歴史は非常に古く,reninが腎臓の中にある昇圧物質として発見されたのは1898年Tiegerstedt, Bergmanの2人によつてであります。その後,reninが血中の基質に働いて,angiotensinをつくり活性をあらわすということが明らかになり,renin-angiotensin系と呼ばれるようになりました。reninが最初に発見されたいきさつからもわかるように,reninというのは非常に強い昇圧性の物質であります。このためにまず最初に高血圧症との関係が非常に考えられました。現在でもまだこの問題については学者の間でいろいろな論議があります。その後,1960年ごろになつてrenin-angiotensin系がアルドステロンのstimulating factorであるということが明らかになりました。
 最近ではこの点についても若干の反省があるというのが現状であります。最近では腎臓の中の調節因子(intrarenal regulator)としての役割りをrenin-angiotensin系に持たせようという考えが出ています。このように長い歴史を持つrenin-angiotensin系ですので,多方面の課題をかかえています。

研究の想い出

良き師にめぐりあえて

著者: 久保秀雄

ページ範囲:P.227 - P.233

 学問の上で,とくに輝しい業績として伝わるようなものは何もありません。強いて索めますなら,弱い人間として,起き伏しの波のなかを,平凡ながら,自分の流儀を曲りなりにも,ただ,ひと筋におし通してきたぐらいでしよう。
 この「思い出」について,編集の方々の求められている,いろいろの相のなかに,一人の学徒がどのように成長してきたか,ということも含まれている視点の一つであろうと,やや恣意的ですが,解釈しますと,そうならば,わたしの思い出でも,平凡という線の上でなら,意味もすこしはあるかもと思いまして,書くことをお引受けしたわけであります。

海外だより

CITY OF HOPE医学センターの神経科学研究部門

著者: 栗山欣弥

ページ範囲:P.234 - P.236

 本誌編集室からこれから留学される人達の参考などに本研究所の様子を書いて欲しいというご依頼があつたので,この点を中心に記載して見ることとする。

基本情報

生体の科学

出版社:株式会社医学書院

電子版ISSN 1883-5503

印刷版ISSN 0370-9531

雑誌購入ページに移動

バックナンバー

icon up
あなたは医療従事者ですか?