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雑誌目次

雑誌文献

生体の科学21巻2号

1970年04月発行

雑誌目次

卷頭言

医学と生物学

著者: 伊藤宏

ページ範囲:P.49 - P.49

 全国に波及した大学紛争は,いま不気味な,なんともわりきれない外見上の平静を取り戻したかに見えるが,提起された問題の真の解決はすべて今後の忍耐強い,たゆまない改革の努力にかけられており,大学に身を置く者としてはこれを回避することはできない。
 医学部における問題点について私の管見をのべてみたい。

主題 聴覚・1

聴覚生理学の展望

著者: 勝木保次

ページ範囲:P.50 - P.65

 最近の感覚生理学の進歩は眼覚ましく,学生の講義の際にいつも感ずることは,よくもこれだけわかつてきたものだと感心する。聴覚生理学もその一つで,筆者が生理学の時間にきいた講義の大部分は,聴器の微細構造と,精神物理学に属する音刺激とその聞え方であつて,内容は実験心理学的事項が多かつた。
 そのうち神経生理学,脳生理学が飛躍的な発展を示すにつれて,微小電極法の発見(1949)とともにneuron生理学がおこり,ここに画期的な生理学の発展が,ひろい分野に渉つて齎されることになつた。もちろん電子工学の発展に俟つ所が多かつたが,transistorの発展につれてすべての器械の小型化が実現し,これによつて多要素器械が製作され,従来不可能とされていた実験も可能となり,ここにも新しい分野がひらけたのであつた。

蝸牛の組織化学

著者: 野村恭也

ページ範囲:P.68 - P.80

 蝸牛は標本作成の点で問題点が多く,一般の組織化学研究方法が,そのまま使用できないので先ずその方法論についてのべる。

解説講座 鼎談

性ホルモンの作用機構(2)

著者: 加藤順三 ,   藤井儔子 ,   江橋節郎

ページ範囲:P.81 - P.89

 □Receptor説□
 江橋 勝手なおしやべりをしましたが,ここで話を本筋に戻しまして,現在の蛋白合成時代といいますか,分子生物学時代に橋渡しをするような説としてのMueller説が出ましたので,その先をひとつ……。
 加藤 それで次がいわゆるエストロゲンのreceptor受容体説というのが登場してきたわけです。これは1962年にChicago Ben May laboratoryのJensenたちがだした説なのです。これはどういう実験からきたかと言いますと,非常にhigh specific activityのtritiated estradiolをラットに注射いたしまして,組織による3H-estradiolのuptakeのパターンを見ますと,子宮によるuptakeが特異なestradiol patternを示すということがわかつたわけです。この場合,子宮だけをまずあげますけれども,子宮というtarget tissueによる3H-estradiol摂取の特異な点を言いますと,一つにはその3H-estradiolが選択的にuptakeされるということをまず見つけたわけです。要するに取り込まれるradioactivityが非常に子宮では高いということ。それから次に,それがかなりの時間にわたつてretentionされるということを見つけております。

研究の想い出

灰色の道を歩む

著者: 簑島高

ページ範囲:P.90 - P.95

 はじめに
 田舎で育ち,小学校,中学校,高等学校をへて大学を卒業し,ともかく老生理学者として余生を楽しむことができるのは,父母の恵み,諸学校の恩師の教訓によるものである。貧弱な稲の一株が成育し実を結ぶには太陽の光と空中の炭酸ガス,地中の窒素,燐および水が適時適量に与えられるからである。私にとつての太陽は恩師永井潜先生であり,空中や地中の諸物質によつて作られるATPにたとえることのできる研究のエネルギーは恩師橋田邦彦先生によつて与えられた。この過去約43年間歩んだ道は必ずしも平担ではなかつた。私の学問上の遍歴は意外に広く,多くの研究室に亘る研究に従事したので研究協力者はかなり多数で,限られた紙数でこれらの人の名前は出すことができず,ごく主な題目とこれにタッチした十数名の方に限定する。

基本情報

生体の科学

出版社:株式会社医学書院

電子版ISSN 1883-5503

印刷版ISSN 0370-9531

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