文献詳細
文献概要
主題 聴覚・2
モルモットの聴覚について—蝸牛における受容機構
著者: 田中康夫1
所属機関: 1京都府立医科大学耳鼻咽喉科学教室
ページ範囲:P.132 - P.144
文献購入ページに移動蝸牛電気現象に関する研究はcochlear microphonicsに該当する電位の発見から現在まですでに40年を経過してきている。WeverおよびBrayによるこの電位の発見はネコの蝸牛からであつたが,その後の主な研究成果はモルモットの蝸牛を用いて得られたものが多い。哺乳類聴器の生理学や生化学に多くモルモットが用いられるのはその解剖学的な特性と動物の供給が容易なためである。
モルモットの中耳骨胞は前後径が11mmであり契歯目の中でも大きい方である45)。蝸牛は骨胞内に突出し4回転している。ネコでは前庭窓端のごく一部が突出しているだけであるが,モルモットでは基礎回転の半分すなわち蝸牛全容積の1/5が側頭骨に埋もれているのみで大部分が露出しており,蝸牛管縦軸に沿つた部位別の電位測定に適している。蝸牛管の全長は回転を引き伸ばすと19mmであり21),比較的広い音域に応ずる基底膜構造を備えている。蝸牛骨壁は薄く脆弱であり,尖端の鋭利なナイフで容易に削り開窓することができる。黒目のモルモットでは骨壁を透して色素帯が認められ,これを目標に各回転の中央階を刺入できる。また,正円窓膜もネコに較べて薄く基底膜を透視することができ,経正円窓によるコルチ器(らせん器)および中央階刺入も可能である。
掲載誌情報