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文献詳細

雑誌文献

生体の科学21巻4号

1970年08月発行

文献概要

特集 代謝と機能

卵リンタンパク質とそのリン酸代謝

著者: 真野嘉長1

所属機関: 1東京大学医学部生化学教室

ページ範囲:P.198 - P.226

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 Ⅰ.はしがき:本研究の生い立ち
 私と吉川先生との出合いは学生のころの講義であつたから,かれこれもう25年ちかくも前のことになる。先生は当時公衆衛生院から助教授として着任早々の新進気鋭で,何事もあけすけの気取らない講義ぶりにはなんらかの親しみを覚えた。元来暗記物と心得ていた化学は私の大嫌いな学科で,入学試験での化学はこれでもよくパスしたと思われるほどの惨憺たる成果であつた。その私が先生の講義を通して生化学こそ今後の生物科学の中心であり,主流たるべきを啓発されたのである。入学後なお雪辱の意味もあつて神田の古本屋で漁つた一冊の有機化学の本を手始めに入つたこの道が結局,一生を左右してしまつたのだから洗脳の程度も大したものであつた。生化学に入れ上げるようになると本来凝り性の私はもう医学の他のあらゆる分野の勉強は試験通過のための低空飛行術ときめこみ,卒業までの4年間は非合法的な自主カリキュラムに従つて,生化学の勉強だけしかしなかつたものである。こうして生化学に入れ上げはじめた1学年の後半から読みかじつた本をたよりにしきりと先生の研究室に出入りして小生意気な質問を発しては先生を困らせていた。当時私は大学の先生とはめつぽう偉くて,あらゆることに通暁しているものと思つていた。今その立場に自分が立つてみると誠に汗顔の至りである。

掲載誌情報

出版社:株式会社医学書院

電子版ISSN:1883-5503

印刷版ISSN:0370-9531

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