特集 代謝と機能
ピリミジン塩基生合成の調節をめぐつて
著者:
橘正道1
所属機関:
1千葉大学医学部生化学教室
ページ範囲:P.271 - P.281
文献購入ページに移動
高等動物のそれぞれの組織あるいは細胞の間には機能面での依存関係があるが,栄養的にも依存しあう面が多い。この物質的な連絡がお互いの機能をどのように,またどの程度に規制しているかということに長く興味を持ち続けてきた。元来はこのような興味に出発して造血組織の核酸前駆体獲得の機構の研究に入り,ここからピリミジン合成の調節機構へと進んできた。これが当面の私どもの研究テーマであるが,ここから出発して少しずつ道をひらいていつかは再び最初の問題に立戻つてみたいと考えている。この小文はピリミジン生合成の調節についての研究の経過と現況を高等動物のみならずひろく一般生物界にわたつて眺め,比較生化学に近い立場からその一断面をまとめてみたものである。ピリミジンについての限られた研究のまとめではあるが,この考察を通じて将来の代謝調節研究一般に関する問題を考えてみたいというのが意図の一つである。
ピリミジンのde novo合成はほぼ全生物を通じオロト酸径路により行なわれる(第1図)。ここでの最初の中間体がカルバミルリン酸NH2CO〜P(C-P)***である。C-Pについて注目したいことはこのものがアスパラギン酸との反応でカルバミルアスパラギン酸をつくり,これからピリミジンが導かれる一方,オルニチンとの反応でシトルリンをつくりこれからはアルギニン,ついで生物によつては尿素が導かれるという関係である。