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文献詳細

雑誌文献

生体の科学21巻5号

1970年08月発行

文献概要

主題 聴覚・3

方向感覚(基礎)

著者: 渡辺武1

所属機関: 1東京医科歯科大学医学部生理学教室

ページ範囲:P.372 - P.383

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 Ⅰ.まえがき
 方向感覚は両耳が働いて成り立つ機能で,空間における音源の定位(localization),距離知覚の問題,あるいは,受話器聴取の場合の音像の定位(lateralization),音像の融合などに関する心理学的研究は古くから広く行なわれているが,単耳聴の生理学的研究の進歩につれて研究の動向が両耳作用の問題に入つてきたのが現状である。方向感覚が脳のどの部分で行なわれるかについては,大脳皮質で行なわれるとする中枢説と,脳幹部で行なわれるとする末梢説とがあつて,決定的な解決は今後の問題となつている。
 Pavlov30)は条件反射を利用した動物の行動実験によつて脳梁を切断すると音の空間定位が消失することを述べているが,一方,ten Cate14)は聴領皮質を除去してもなお空間定位の生じることを認めている。近年,Neff26),Nauman25)らの脳梁,中脳,脳幹部正中切断および一側あるいは両側聴領皮質剔除実験から脳幹部の重要性が指摘されている。一方,神経機構の思考をとり入れたBoringの説8),またBékésy5)のtime-intensity trade(時間差—強度差取引き)の概念は興味深いものがある。

掲載誌情報

出版社:株式会社医学書院

電子版ISSN:1883-5503

印刷版ISSN:0370-9531

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