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雑誌目次

雑誌文献

生体の科学22巻4号

1971年08月発行

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巻頭言

多成分系の薬理学

著者: 高木敬次郎

ページ範囲:P.153 - P.153

 薬漬けという言葉は今日では日刊紙上でも散見する。薬を必要以上と思われるほど多量にかつ長期間にわたつて服用させることをいう。
 もちろん,治療効果の発現を期待しているのであるが,思いがけない副作用が現われることも稀ではない。キノホルムとスモン病とか,フェナセチンと腎障害などの因果関係が事実とすればまさしく薬漬けの好例であろう。

主題 Radioimmunoassay

Radioimmunoassay—序論およびその概略

著者: 入江実

ページ範囲:P.154 - P.159

 Ⅰ.はじめに
 今回,「生体の科学」でradioimmunoassayについて,という特集を企画したいというお話を伺つて,基礎医学の先生方にこの方法に関する現状をお知らせし,新たなご批判と寄与をお願いする誠によい機会であると考えた。これはわれわれ日常にradioimmunoassayを用いて研究を行なつているものたちにとつて,以前からの願いであり,われわれの及ばないradioimmunoassayの基礎的な問題へのアプローチ,radioimmunoassayの基礎医学への応用,発展などを今後に期待したい。
 多くの他の測定法と異なつて,radioimmunoassayはまず臨床医学への応用からスタートし,その応用過程にあつて理論,問題点が派生し,しかも応用範囲はどんどん拡大するという発展形式をとつた。臨床医学にあつては疾患の診断にあたつて生体内微量物質の測定を行なうことはしばしば必要であることはいうまでもないが,humoralな物質によつてその臨床像が左右される臨床内分泌学においては,とくにその必要性が強調されてきた。ホルモンの中で,比較的構造の簡単なアミン類,ステロイド類の測定はどうにか可能となつたが,ポリペプタイドを含む蛋白性ホルモンはホルモンの中でも相当の数を占め,しかもその血中濃度はng/ml〜pg/mlの単位であるため測定には困難を極めた。

Radioimmunoassay—方法論を中心に

著者: 井村裕夫 ,   加藤譲

ページ範囲:P.160 - P.175

 Ⅰ.はじめに
 抗インシュリン抗体と131I標識インシュリンの反応を非標識インシュリンが競合的に阻害するという原理に基づいた新しいインシュリンの測定法,radioimmunoassayを,Yalow and Berson1)(1959)が初めて発表して以来すでに10年以上の歳月が経過した。この間radioimmunoassayは成長ホルモンをはじめ,種々の蛋白ホルモンの測定にひろく応用され,さらに最近ではステロイドホルモンや甲状腺ホルモンに対してもこれらをハプテンとして蛋白と結合させて抗体を作製し,radioimmunoassayを行なうことが可能となつてきた。またホルモン以外の物質,たとえば内因子,オーストラリア抗原,補体,ヂギタリス剤,モルフィンなどについてもradioimmunoassayが成功している。このように過去10年間にradioimmunoassayは著しい発展を示したが,今後種々の微量物質の測定に一層その応用の範囲が拡大されるものと考えられる。
 本稿ではradioimmunoassayの実施にあたつて必要な手技,とくに抗体の作製とその検査法,標識ホルモン作製法,測定の実際,とくに結合ホルモン(B)と遊離ホルモン(F)の分離法について述べる。

大分子ホルモンのRadioimmunoassay

著者: 熊原雄一 ,   福地稔 ,   松岡徹

ページ範囲:P.176 - P.186

 Ⅰ.はじめに
 Radioimmunoassay(RIA)は特異的抗原抗体反応に放射能を利用することで,ごく微量の物質の測定を行なおうとする方法である。したがつて,その物質自身が抗原となり,高力価の,あるいはすぐれたavidityを持つ抗体が比較的容易にえられ,しかもその物質の測定法が未だ十分確立されていない主に大分子のpolypeptide hormoneの測定法として発展してきた。最近では,この分野における技術的進歩はめざましいものがあり,それ自身抗原となりにくい小分子の測定法としての開発の努力も活溌で,その応用の範囲も一段と拡大されつつある。本稿では大分子のpolypeptide hormoneのRIAにつき各論的に概説するのが目的である。
 しかし,この分野は範囲が広く,ともすると総花的にならざるをえないが,各々の分野における現状とその問題点からRIAの現状の理解とその今後になんらかの示唆を与える一助ともなれば幸いである。

研究の想い出

わが得意も失意も他山の石として

著者: 松田勝一

ページ範囲:P.187 - P.192

 この春でした。冲中重雄君が文化勲章を受けた祝いに級友たちが集まつた席上,酔つた口の悪いのが私に「お前が大学の先生をやるのだから学生がゲバるのはあたりまえよ」といい,またある男の奇行をはなしているとき別の酔友は「しかしお前のほうが変つているよ」といいました。私自身そんな変人とは思わないし,出席率こそ悪かつたが,格別学問を怠けていたわけではありません。しかし昭和3年東大医学科を卒業したとき「ボクはとにかく学生生活を十分楽しんだから,今後はひとの倍は勉強してやろう」と自分にいいきかせたものです。しかしそれが災してか,過去42年間の研究生活が,とかく猪突邁進に陥つた悔いがあります。
 医者になるつもりで,府立一中でドイツ語をやり,4年を終えたとき担任の先生に挨拶にいつたところ,医学を学んだことのあるその小柳篤二先生から,君は病理学をやつたらといわれました。どんな見当かは知りませんが,私は数学物理化学などが得意だつた反面,いわゆる記憶ものが駄目だつたからでしよう。

基本情報

生体の科学

出版社:株式会社医学書院

電子版ISSN 1883-5503

印刷版ISSN 0370-9531

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