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文献詳細

雑誌文献

生体の科学22巻5号

1971年10月発行

文献概要

実験講座

神経組織の培養—1.髄鞘形成と脱髄について

著者: 米沢猛1

所属機関: 1京都府立医科大学病理学教室

ページ範囲:P.230 - P.242

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 神経組織の培養の歴史は古く,今世紀の初期に始まる。1907年Harrison15)は蛙の神経管が淋巴中で発育分化するのを報告し,これが神経組織の培養の最初の報告とされている。それ以後数多くの研究が報告され今日に至つている。
 その数多い報告のうち,Peterson & Murray28)によつてin vitroの髄鞘形成に関する報告がなされたが,これはそれ以後の培養方法と方向とを決定づけるものとなつた。すなわち神経組織で重要な機能と特異な形態をもつ髄鞘は,それをのぞいて神経組織を考えることが不可能であり,したがつてその培養においても髄鞘が形成されることが要求されるようになつた。このことはまた一方では,神経組織の培養が,同組織の成分である個々の細胞を培養する細胞培養とは異なつた方向,すなわち神経組織成分のすべてを含むような培養法──器官培養──をとらざるを得ないことをも意味する。というのは髄鞘は神経軸索のまわりに,オリゴデンドログリアあるいはシュワン細胞によつて作られる構造で,一つの種類の細胞によつて作られるものではないからである。このように神経組織の培養は,その多くが器官培養として行なわれ,神経組織成分が生体内で示すと同様な形態と機能とをin vitroの環境下でも示すように努力が払われている23)。そして個々の種類の細胞を培養する細胞培養は,特殊な目的のため行なわれているといえるであろう。

掲載誌情報

出版社:株式会社医学書院

電子版ISSN:1883-5503

印刷版ISSN:0370-9531

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