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綜説
筋収縮時およびadrenaline作用時におけるglycogen代謝
著者: 小沢鍈二郎1
所属機関: 1東京医科歯科大学医学部薬理学教室
ページ範囲:P.262 - P.283
文献購入ページに移動 筋収縮機構を明らかにすることは,昔から多くの生理学者の関心の的であつた。その研究の歴史をながめると,多くの事実が提出され,誤つた考え方が現われ,ついでそれが訂正されるということがくりかえされてきている。そしてその中から正しいものが生き残つて新しい概念が形作られる。しかし現在のわれわれの持つている知識や概念も歴史の流れの一つの断面にすぎないからやがて補充され訂正される部分も多いであろう。筋収縮研究史についてはすでに語られている1)2)。著者がここで試みようとすることは,筋収縮の一現象としてのglycogen代謝機構の概念の形成過程を追い,また筋収縮とは切つても切れない関係にあるadrenalineのglycogen代謝作用を研究の移りかわりを追いながら現在の考え方に対するわれわれの態度を明らかにすることである。
現代では筋収縮機構を考える上で,少なくとも骨格筋ではenergyを消費する収縮系と,基質を分解してそのenergyを筋収縮の直接のen—ergy源であるATPの形に変換する酵素系に分けて考えることはほとんど抵抗なく受け入れられるであろう。しかしながらこの二つの過程をある程度独立した過程として理解するに至るまでには,一方が本質的なものであり,他方はこれの結果であるとする考え方が支配的であつた時代もあつた。
現代では筋収縮機構を考える上で,少なくとも骨格筋ではenergyを消費する収縮系と,基質を分解してそのenergyを筋収縮の直接のen—ergy源であるATPの形に変換する酵素系に分けて考えることはほとんど抵抗なく受け入れられるであろう。しかしながらこの二つの過程をある程度独立した過程として理解するに至るまでには,一方が本質的なものであり,他方はこれの結果であるとする考え方が支配的であつた時代もあつた。
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