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文献詳細

雑誌文献

生体の科学23巻1号

1972年02月発行

文献概要

総説

中枢における化学伝達物質

著者: 伊藤正男1

所属機関: 1東京大学医学部生理学教室

ページ範囲:P.2 - P.19

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 すでに繰返し論じられているように,ある物質があるシナプスでの化学伝達物質であることを証明するためには次の5つの規準を充たさねばならない。(1)その物質がそのシナプスと関連して存在せねばならない(存在)。(2)その物質を人工的に与えた場合に生ずる作用が実際のシナプス作用と同一の生理学的性質をもつていなければならない(生理作用)。(3)そのシナプスで放出される実際の伝達物質のシナプス後部細胞に対する作用を修飾する薬剤はその物質の作用を同様に修飾せねばならない(薬理)。(4)シナプス活動に伴つてその物質が放出されねばならない(放出)。(5)その物質を合成・分解する酵素系がそのシナプスと関係して存在せねばならない(酵素系)。
 末梢神経系では,アセチルコリンが神経筋接合部および交感神経節内シナプスでの伝達物質であることについて,またガンマーアミノ酪酸GABAがザリガニの抑制性神経筋接合部の伝達物質であることについては今日これら5つの規準がすべて充たされているのであるが,中枢のシナプスについてはこれが全部検討されている例は数少ない。一般的に言うと,中枢神経系では,(1)の存在がまずある物質について指摘されると,その物質の生理作用(2)が調べられ,はつきりしたシナプス作用の認められる時はさらに薬理作用(3)が検討される。

掲載誌情報

出版社:株式会社医学書院

電子版ISSN:1883-5503

印刷版ISSN:0370-9531

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