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文献概要
主題 電解質・非電解質の能動輸送・1
小腸,腎尿細管における糖の能動輸送のNa+依存性と糖輸送電位
著者: 星猛1
所属機関: 1東北大学医学部生理学教室
ページ範囲:P.69 - P.88
文献購入ページに移動 Ⅰ.はじめに
小腸や腎尿細管が甚だしい濃度勾配に逆らつて糖やアミノ酸を能動的に輸送している事は古くから周知のことであるが,その上り坂輸送の機序,特に上り坂輸送の駆動力の本態や膜透過機構に関しての研究が進展してきたのは比較的近年のことである。その端緒となつたのは,1958年Riklis and Quastel78)が,小腸での糖輸送が,外液にNa+が存在しないとまつたくおこらなくなることを明らかにしたことであると思われる。それ以来多くの研究がこの輸送のNa+依存性の本態の究明に向けられ,この種の物質の能動輸送の細胞機序にもようやく解明のメスが入れられる様になつてきた。
他方,小腸や腎に限らず,アミノ酸その他幾つかの有機溶質の能動輸送が見られる組織についても,その輸送にNa+が絶対的に必要である例が数多く見出されてきており(綜説Schultz and Curran84)参照),今日このNa+依存性輸送機構は,少なくとも脊椎動物細胞における有機溶質能動輸送に共通した生物学的原則ともいうべき機構であろうとの考えが一般化しつつある様に思われる。しかし一方では例外的にNa+を必要としない上り坂輸送の例も知られて来ており,法則的なものとして確立されるまでにはなお多くの観察や検討が必要である様に思われる。
小腸や腎尿細管が甚だしい濃度勾配に逆らつて糖やアミノ酸を能動的に輸送している事は古くから周知のことであるが,その上り坂輸送の機序,特に上り坂輸送の駆動力の本態や膜透過機構に関しての研究が進展してきたのは比較的近年のことである。その端緒となつたのは,1958年Riklis and Quastel78)が,小腸での糖輸送が,外液にNa+が存在しないとまつたくおこらなくなることを明らかにしたことであると思われる。それ以来多くの研究がこの輸送のNa+依存性の本態の究明に向けられ,この種の物質の能動輸送の細胞機序にもようやく解明のメスが入れられる様になつてきた。
他方,小腸や腎に限らず,アミノ酸その他幾つかの有機溶質の能動輸送が見られる組織についても,その輸送にNa+が絶対的に必要である例が数多く見出されてきており(綜説Schultz and Curran84)参照),今日このNa+依存性輸送機構は,少なくとも脊椎動物細胞における有機溶質能動輸送に共通した生物学的原則ともいうべき機構であろうとの考えが一般化しつつある様に思われる。しかし一方では例外的にNa+を必要としない上り坂輸送の例も知られて来ており,法則的なものとして確立されるまでにはなお多くの観察や検討が必要である様に思われる。
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