文献詳細
文献概要
主題 電解質・非電解質の能動輸送・2
胃粘膜におけるH+,Cl−の能動輸送
著者: 今村昭1
所属機関: 1京都府立医科大学中研同位元素室
ページ範囲:P.110 - P.121
文献購入ページに移動 胃粘膜のHCl分泌が典型的な能動輸送の1例であることは明らかである。なぜならpH 7.3の血液からpH 1に近い胃液が形成されるのであるが,これはH+が106倍の濃度勾配に逆らつて輸送されることになるからである。能動輸送としての胃酸分泌機構の研究は早くから多くの学者の関心を呼び,活発な研究が行なわれて種々の事柄が明らかになつたのであるがその理解は現在でも十分に満足なものであるとはいい難い。1971年夏Frankfurt/Mainで行なわれた"H+ion輸送"についての国際シンポジウムの冒頭演説で主催者の一人E.Heinzは次のように述べた。"ある意味ではこのように簡単で直線的な現象が解決されていないことは,複雑に入り組んだ遺伝現象などを解いた生理生化学者の怠慢であるといえるかも知れない"。
さてHCl形成機構の大きな問題点の一つにH+の起源がある。水から来るのか?基質の水素たとえばglucoseのそれが酸化されるのか?もちろん基質の水素といえども,もともとは光合成により水に由来するのだが,それはさておき動物体のなかで何からH+が造られるかは最大の問題の一つであつた。しかしHeinz1)もいうように現在ではそれほどでは無くなつたように思われる。すなわち従来は基質からのH+とO2消費量との比はO2が受容し得るeの数すなわち化学当量比のみで厳密に制限されると考えられていた。
さてHCl形成機構の大きな問題点の一つにH+の起源がある。水から来るのか?基質の水素たとえばglucoseのそれが酸化されるのか?もちろん基質の水素といえども,もともとは光合成により水に由来するのだが,それはさておき動物体のなかで何からH+が造られるかは最大の問題の一つであつた。しかしHeinz1)もいうように現在ではそれほどでは無くなつたように思われる。すなわち従来は基質からのH+とO2消費量との比はO2が受容し得るeの数すなわち化学当量比のみで厳密に制限されると考えられていた。
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