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文献詳細

雑誌文献

生体の科学23巻4号

1972年08月発行

文献概要

研究の想い出

法医学往来

著者: 松倉豊治12

所属機関: 1大阪大学 2兵庫医科大学

ページ範囲:P.204 - P.210

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 法医学へのきつかけ
 江戸川乱歩や小酒井不木,牧逸馬ら諸氏が,当時のいわゆる探偵小説や推理小説を盛んに雑誌『新青年』に発表していた大正中期の頃,私は中学生であつた。そしてこれらの読物を愛読し,殺人や自殺とか,エロだのグロなどといつた事柄に,ひそかに興味を持つていた。もつともこの年頃の少年少女は,大ていそういうものである。今でも……。
 その私が大正12年(1923)4月,満16歳余で当時の大阪医科大学予科に入学して間もなく,何かの講義が臨時休講になつた。いつもはそんな時,校庭の草つ原に寝そべつて誰彼となく無駄話を交わして過ごしてしまうのに,そのときは何を思つたのか,殊勝にも学校の図書室に入つてみた。特に勉強するという積りはなく,何か面白い本でも……と思つたまでのことである。その時ふと目にとまつたのが『囚人の心理』という本である。探偵小説類を愛読していた少年にとつて,これは少少魅力のある表題であつた。

掲載誌情報

出版社:株式会社医学書院

電子版ISSN:1883-5503

印刷版ISSN:0370-9531

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