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文献詳細

雑誌文献

生体の科学23巻5号

1972年10月発行

文献概要

巻頭言

常識

著者: 東昇1

所属機関: 1京大(ウイルス研究所)

ページ範囲:P.213 - P.213

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 1971年11月11日,科学技術庁主管の国立防災科学技術センターの"がけ崩れ"の実験中に,15名の科学者が殉職するという惨事がおこつた。天災防止研究が人災の悲劇をもたらした。この種の偶発事故の際,"予想以上に"あるいは"予想を上まわつて"などと,よく報道される。この惨事の場合,予想をこえて,地すべりの速度が早かつた,予想以上に地すべりの地域が大きかつたと報道された。
 予想とは,いつたい何か。それは"科学の常識"と関連しているといつてよいであろう。科学とは何か。これまで数多くの答えがあつた。「科学は常識のエッセンスである」という故中谷宇吉郎博士(物理学者)の説明はもつとも分り易いものである。およそ常識は,時代とともに常に変動するという特徴をもつ。昨日の常識は破られ,あるいは拡張されて今日の常識となり,今日の常識は明日の常識によりおきかえられる運命にある。科学的真理には,もうこれでおしまい,ということはない。極限とも思つた知識の,さらにかなたにより深い知識を求め究めてゆくのが科学である。

掲載誌情報

出版社:株式会社医学書院

電子版ISSN:1883-5503

印刷版ISSN:0370-9531

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