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雑誌目次

雑誌文献

生体の科学24巻3号

1973年06月発行

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巻頭言

ライフ・サイエンスと医学

著者: 塚田裕三

ページ範囲:P.109 - P.109

 このところライフ・サイエンス(生命科学)という言葉があちこちで聞かれるようになつた。しかし,その内容は必ずしも明確なものではないのであるが,その背景には分子生物学が急速に進展し,生命が物質的存在であることがもはや動かし難い事実で人間生命もこの延長線上にあるという認識がもたれるようになつたことがあげられる。また一方で環境破壊が極度に進行しており,生物学的な人間生命に大きな危機感がもたれていることもこれに拍車をかけている。
 内容はともあれ,ライフ・サイエンスの中心的な課題が人間生命にあることは疑う余地はない。

総説

神経細胞の特異性の研究—in vitroの研究を中心にして

著者: 天野武彦

ページ範囲:P.110 - P.135

 最近のシナプス形成を中心とする研究は,一方ではアセチルコリンレセプクーの研究,オートラジオグラフィーによるレセプター部位の局在性,筋細胞の分化に伴うレセプターの変化,正常神経細胞,ニューロブラストーマを用いて生化学的方法によつて神経興奮,刺激伝達の機構を明らかにしようとするNirenberg,3〜13),Nelson18,19),Fambrough25〜29)の研究など,研究は多角的かつ総合的になりつつある1,2)。これらの研究はパストール研究所のJ. P. hangeux43)のアセチルコリンレセプターの研究とともに注目されており,Cajal,Harrison,R. W. Sperry63),最近ではM. Jacobson62)R. M. Gaze61)の神経発生に伴う神経細胞の特異性を決定していく因子の解明の研究と不可分にあり,分子生物学者,神経生理学者の興味をもつている中心課題である。この総説では神経細胞の特異性の問題を中心にしてとくにM. Jacobson,R. Gazeの論説を整理し,ついでこの分野での最近の研究,組織培養法,hybrid細胞,レセプターの研究について述べてみたい。実験の可能性について論ずることもあるので,多くの誤つた推論を重ねる危険があり,読者は批判的に読んでいただくことを希望する。

実験講座

熱測定

著者: 山田和広

ページ範囲:P.136 - P.145

 はじめに
 約120年昔,Helmholtzははじめて筋肉の熱発生の測定を行なつた。三対の熱電対と検流計を直列につないで,カエルの筋の持続性の収縮による温度の上昇を記録している。これは彼の"Überdie Erhaltung der Kraft"が出版された直後であり,その書物の成立には当時の生理学者たちの助力が大きかつたという。明らかにエネルギー保存についての考えをめぐらしながら,彼は筋肉の熱発生を測定したのである。
 実験方法は今日でもこれと同じである。その原理は,筋あるいは神経の発生した熱の一部で温度変換器をあたため,その電気的出力を増幅・記録する,この方法を近代的なものにしたのは,英国の生理学者A. V. Hillであつた。その方法の詳細はHillの非常に有用な書物に詳しく述べられている(Hill,1965)。その書物で彼は"It is dangerously eas to get beautiful thermomyograms;the problem is to know what they really mean, to transform them into absolute units of heat and time, and to be sure what crrors affect them."と述べている。生体の興奮性組織についての熱測定は今日でもほとんど手製の装置に頼らなければならない。

研究の想い出

消化管運動の研究を中心として

著者: 福原武

ページ範囲:P.146 - P.151

 研究の出発点
 私は昭和3年(1928)新潟医科大学を卒業して以来,45年の長きにわたつて生理学研究の道を歩んできた。私の研究分野は,心臓の自働能,消化管運動,呼吸中枢および呼吸反射,消化管以外の内臓器官の運動に分類することができるが,もつとも長く従事したのは消化管運動の研究である。つぎにこの分野において私のたどつた研究の動機とか,その進め方などについて述べてみたいと思う。
 私が医大を卒業した当時,日本の生理学会では京都大学と慶応大学の両学派が神経興奮の伝導をめぐつて激しい論争を繰り返していた。この論争は日本の生理学者の自信と自主性を鼓舞する契機となつたという点で日本生理学史上重要な出来事であつたと思う。

学会印象記

1973年Gordon Research Conference ‘Smooth muscle’に出席にして

著者: 栗山熙

ページ範囲:P.152 - P.156

 1973年度のGordon Research Conferencesの一つのテーマとして平筋滑がとりあげられた。
 この会のorganizerとしてはL. Barr教授(Illinois大学)が当たり,coorganizerとしてR. Furchgott教授(SUNY),Kao教授(SUNY)およびMarshall教授(Brown大学)がこの会の運営を企画して開催されたものである(ただし,最初はConstantin教授とTwarog教授が参画した)。

基本情報

生体の科学

出版社:株式会社医学書院

電子版ISSN 1883-5503

印刷版ISSN 0370-9531

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