文献詳細
巻頭言
文献概要
昭和24年の秋,私は東北大学の本川生理に留学した。優秀なスタッフに囲まれながら,本川先生は自分から1日1実験を厳守し,できない時は翌日の2実験で補つた。朝は誰よりも早く,夜は誰よりも遅く,その精力にはただただ驚かされた。当時は,網膜の感電性の仮説をたて,次々に心理と生理の間を埋めていた頃で,先生の視覚研究における頂上時代であつた。
1日1実験は,網膜の教えてくれることだけが研究を飛躍させる,という理由からと聞いたが,強烈な主体性が,むしろ網膜を圧倒するかに見えた先生にこの言ありとは,やはり実験科学における宿命的な限界を知る人の心として私は理解した。
1日1実験は,網膜の教えてくれることだけが研究を飛躍させる,という理由からと聞いたが,強烈な主体性が,むしろ網膜を圧倒するかに見えた先生にこの言ありとは,やはり実験科学における宿命的な限界を知る人の心として私は理解した。
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