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雑誌目次

雑誌文献

生体の科学24巻6号

1973年12月発行

雑誌目次

巻頭言

石油危機のなかで

著者: 赤羽治郎

ページ範囲:P.265 - P.265

 この12月初め(1973)から私どもの働く研究室の暖房は朝8時から1時間の通気に制限された。日中でも室温12°〜14℃くらいだから実験にも差支え,ことに動物の飼育条件は最低となつてしまつた。これからさきどうなるか,いまのところ予想もたたないという。
 はげしいインフレ物不足で諸工業の生産は低下するだろうし,車も減るだろうから,水も大気もきれいになることであろう。しかしその反面,工場側は無理な生産性の強化に向うことが懸念される。これまでの環境汚染が経済優先の高度成長路線にのつかつて,人間軽視に発したことを思えば,この経済危機にさいしても,環境規制緩和をきびしく警戒しなければならないと思う。ニュースによると米国では,今次国会にマスキー法自動車排気ガス規制基準の実施をさらに1年延長しようとする修正案が提出されたというが,幸いにこれを下院が否決して,環境保全のなしくずし修正に歯止めしたことが報道された。

総説

出血のメカニズムへの1つのアプローチ—蛇毒出血因子(赤血球漏出因子)の研究

著者: 逢坂昭

ページ範囲:P.266 - P.293

 Ⅰ.はじめに
 蛇毒は一般に,各種の水解酵素の豊富な宝庫として知られているが1)4),ほかに種々のタンパク性有毒因子(毒素)***を含んでいる1)−4)。これらの有毒因子のなかには,末梢血管系に作用してなんらかの異常を起こさせ,赤血球を血管の外に漏出させる特異な作用(出血作用)を持つものがあり,このような作用を示す有毒因子は出血因子(hemorrhagic Principle;hemorrhagin)と呼ばれる4)5)
 出血因子はマムシ科(Crotatidae),クサリヘビ科(Viperidae)のすべての蛇毒****やある種のクモ毒(Loxosceles科)などの,いわゆる"動物毒素"(animal toxin)中に含まれているほか,ウェルシュ菌(Clostridium welchii;Clostridium Perfringens),ヒストリチクス菌(Clostridium histolyticum),百日咳菌(Bordetella pertussis),志賀赤痢菌(Shigella shigae)などの病原細菌の産生する,いわゆる"細菌毒素"(bacterial toxin)中にもその存在が知られている5)

実験講座

電子顕微鏡写真からのフーリェ法による三次元構造の再構成

著者: 若林健之

ページ範囲:P.294 - P.306

 Ⅰ.はじめに
 生物学における構造研究は多くの場合,構造自体に興味があるのではなく生体機能を知るための手がかりを得ることを目的としている。
 そして生体が三次元空間で機能している以上,三次元構造を決定することは特に有用であろう。

研究の想い出

光陰に移されて

著者: 吉川春寿

ページ範囲:P.307 - P.314

 □大学まで□
 研究の想い出など書くほどの年齢でもないのに,創刊以来編集に関係していた本誌に執筆を依頼された。光栄の至り,といつてよいのかどうか,少なからず複雑な気持である。研究業績といつても大したものはないが,平凡な一大学教授が今日まで歩んで来たあとを振りかえつて,ここに書きとめておくことも,後の人のために多少の役には立つかも知れない。研究したことどもは時折総説の形で書いてあるからここには詳しくは述べず,主として私の研究してきた環境とか背景について書き記しておきたい。
 わが一代記を書くわけではないが,一応,なぜ私が研究生活をするようになつたかについてはじめに申し述べておこう。

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生体の科学 第24巻 総目次

ページ範囲:P. - P.

基本情報

生体の科学

出版社:株式会社医学書院

電子版ISSN 1883-5503

印刷版ISSN 0370-9531

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