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解説
文献概要
人工ニューロン,脳のモデル,生体工学,人工知能,パターン認識といつたことばが流行しはじめ,工学畑の研究者が生体との境界領域を手がけるようになつてから10年以上の年月が経過している。しかし,この方面の研究は目的が素人うけしやすいのとは対照的に,問題の本質的な難しさ,奥深さのために著しい成果がなかなか得られないのが実情である。それというのもこうしたサイバネティックスの問題にどのようにアプローチしたらよいか,という方法論的な検討が何よりも不足しているからであろう。この意味では,当を得ているかどうかが必ずしも定かでない生体モデルを舞台に実験的研究に辛苦するよりも,少しひき下がつてさまざまな方法論を打診していくこと—その結果は多くの場合失敗に帰するのだが—が意義のあることかも知れない。ここに紹介するパーセプトロンの理論もそういう意味での偉大なる失敗作の一つである。それゆえにこそ方法論模索の典型として高く評価できると同時に,この理論の創作者であるMITのMinskyとPapert両氏のすぐれた頭脳のひらめきをあますところなく鑑賞できる労作でもある。
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