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特集 伝達物質と受容物質
総説
シナプス小胞と神経終末細胞質—膜再循環仮説とpresynaptic meshworkについての新しい知見
著者: 門田健13 門田朋子23
所属機関: 1大阪大学医学部薬理学教室 2大阪大学医学部解剖学教室 3
ページ範囲:P.286 - P.305
文献概要
電子顕微鏡(電顕)による中枢神経系研究の初期にPalay133〜135),は神経細胞の主要構造の一つとしてシナプスをあげ,シナプス小胞(synaptic vesicles:SV)とシナプス膜肥厚(synaptic paramembranous densities)をその特徴的構造とした(図1)。このPalayの指摘はその後大きく展開した。まずGray63)によつて,type Ⅰ,Ⅱという中枢神経シナプスの分類がなされ,この2分類法は内薗172)のflat vesiclesの報告と相まつて現在はtype Ⅰ-球形シナプス小胞-興奮性,type Ⅱ-扁平シナプス小胞-抑制性という区分に到つているのは周知のとおりである68)。この神経終末に対する生化学的アプローチはWhittakerら64,180)およびDeRobertisら38,39)の脳シナプトゾーム(図3),SV(図4a,b)の分離によつて始められた。これらの電顕的構造が刺激伝達物質,その合成・分解の酵素系の局在と結びつけられて以来,これらの細胞下分画をめぐる伝達物質の種類・出納,またこれら分画の構成タンパク質・脂質・種々の酵素活性の割出しについての報告は多くなる一方である184)。
この綜説ではここ数年間の研究の展開からシナプス小胞と終末細胞質を主とした概説を試みる。
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