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研究の思い出
一生理学者の思い出
著者: 問田直幹1
所属機関: 1九州大学
ページ範囲:P.356 - P.362
文献購入ページに移動そもそも私が生理学に志した根源のようなものが,すでに中学時代にあつたと思う。その頃[子供の科学」という雑誌が出た。創刊号の表紙には,まんまるい大きな十五夜の月を背にして笛を吹いている少年が描かれていた。原田三夫氏の月や星の話,また当時盛んになりつつあつたラジオ関係の記事が毎号連載されていた。
私が県立福岡中学校に入学したのは大正12年だが,14年には日本ではじめてのラジオ放送局が東京の愛宕山にでき,JOAKとよばれた(熊本のJOGKは2年後,福岡のJOLKはさらに3年たつてからできた)。それに刺激され私はラジオの受信器を組み立てるのに熱中した。しかしJOAKを聴くには高周波増幅スーパーヘテロダイン方式の受信器が必要だつた。当時200円もかかるそんな受信機には手が出ないので,鉱石式や真空管1個の受信機に片耳のレシーバーで我慢せざるを得なかつた。もちろんJOAKはだめなので,玄海灘を通る船からの無線電信を傍受するというようなことでわずかに渇をいやしたものだつた。
ところが,あんまりラジオの組立に熱中したせいか,学校の成績ががたつと落ちた。受持の先生には「どうしたんだ」と聞かれ,父にも「ほどほどにせよ」と釘をさされるしまつ。私自身も,間もなく四年生になるのだし,高等学校にはぜひはいりたい,というわけで当分ラジオのほうはやめることにした。そしてどうにか福岡高等学校(旧制)に入学することができた。
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