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特集 生体膜—その基本的課題 総説
生体膜の流動性の生理的意義とそのコントロール—膜融合と関連して
著者: 浅野朗1
所属機関: 1大阪大学蛋白質研究所生理機能部門
ページ範囲:P.390 - P.401
文献購入ページに移動 生体膜の構造が固定したものではなく流動しうるということはFryeとEdidin1)による実験で見事に示された。彼らはマウス由来の細胞と人間由来の細胞をセンダイウイルス(HVJ)を用いて融合させた場合に,それぞれの表面抗原が拡散によつて混じりあうことを報告したが,その結果はすぐに膜モデルに組み込まれてSingerとNicolson2)による生体膜の流動的モザイクモデルが発表された(1972年)。この膜モデルはそれまでの単位膜モデルやサブユニットモデルの長所を失なうことなく取り入れ,欠点を除いている点ですぐれているために,広く一般に受け入れられている。ところで,このような生体膜の流動性が,どのような生理的な意味をもつのかについてはまだ不明な点が多い。たとえば流動性,いいかえれば膜上での分子分布が変わり得るということが,何らかの積極的な意味をもつのか,またそうだとすればそのコントロールメカニズムがあるのかなど,いくつかの基本的な問題がある。そこでここではいままでにわかつているところを整理し,問題点をはつきりさせてみたい。
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