icon fsr

文献詳細

雑誌文献

生体の科学25巻5号

1974年12月発行

文献概要

解説

膜脂質の存在状態—脂質流動性,天然膜と人工膜の異同

著者: 井上圭三1

所属機関: 1国立予防衛生研究所化学部

ページ範囲:P.409 - P.426

文献購入ページに移動
 はじめに
 生体膜の主要構成分がタンパク質と脂質であることは衆知の事実である。最近SingerとNicolson1)は"fluid-mosaic model"を新しい膜のモデルとして提出し,一般に受け入れられるに至つている。膜脂質の主要成分はバクテリア,植物,動物にわたつてリン脂質であり,動物の表面膜やリソゾーム膜ではコレテスロールがリン脂質と約等モル存在する。X線回折,NMR,ESRなどの機器分析やその他以下述べるような天然膜と脂質人工膜の類似点から,膜脂質の約80%以上はいわゆる二分子層を形成していることは疑いないとされている。残りの"minority"としての脂質がどのような存在様式をとつているかについての知見は乏しい。今回ここで述べるのも"majority"としての脂質の存在状態についてである。二重膜を構成している脂質は流動性に富んでいて通例生理的条件の下ではいわゆるスメクト型液晶構造(smetic mesophase,liquid crystal)をとつている。スクメト型液晶とは液体と結晶の中間の性状を示す構造体のうち等方性を二方向に対して示すものをいう。

掲載誌情報

出版社:株式会社医学書院

電子版ISSN:1883-5503

印刷版ISSN:0370-9531

雑誌購入ページに移動
icon up
あなたは医療従事者ですか?