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文献詳細

雑誌文献

生体の科学25巻5号

1974年12月発行

文献概要

解説

生体膜の自己構築性

著者: 香川靖雄1

所属機関: 1自治医科大学生化学教室

ページ範囲:P.427 - P.435

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 はじめに
 生体膜の構造をいろいろな程度に破壊しても,条件によつてはその構造や機能を再現できる。このことをミトコンドリア膜の呼吸系についてはじめて実証したのは,柿内1,2)らであつた。すなわち心筋などの呼吸活性は,アセトンなどの有機溶媒抽出でリン脂質を除くと失われ,リン脂質を再添加すると回復される。これに伴うミトコンドリアの形態変化も観察されている。その後タンパク質や核酸などの生体高分子の研究がすすみ,タンパク質の場合,ペプチド結合(一次構造)さえ残つていれば,条件によつてふたたびもとの高次構造(二,三,四次構造)が復元されること,DNAやRNAの場合も,G-C,A-U(またはT)の水素結合を切断して高次構造を破壊しても,条件によつてはかなり複雑な高次構造が再現されることが確立されたかにみえた。これらの現象は自己構築性(self association)とよばれ,高次構造形成の機序と考えられているが,その内容は複雑であり,また自己構築性をほとんど欠いている例も少なくない。そこでまず高次構造の形成には原則としてどういう要素が必要かを調べてみよう。

掲載誌情報

出版社:株式会社医学書院

電子版ISSN:1883-5503

印刷版ISSN:0370-9531

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