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解説
超薄切片法における脱水剤および包埋剤としての合成樹脂について
著者: 串田弘1
所属機関: 1慶応義塾大学電子顕微鏡研究室
ページ範囲:P.436 - P.446
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電子顕微鏡が1939年末期より1940年初期にかけて市販されて以来,生物組織の内部構造を観察することが行なわれた。しかし,その方法には光学顕微鏡的切片法が用いられたので,約10年間にわたつて生物組織の内部構造は電子顕微鏡で観察されるにいたらなかつた。それは包埋された組織片が電子顕微鏡で観察される切片の厚さに薄切できなかつたためである。すなわち,50〜80kVの加速電圧の電子顕微鏡では切片の厚さが0.1μ以下であるため,光学顕微鏡的切片法におけるパラフィン,セロイジン,カーボワックスなどの包埋剤ではその厚さの切片を得ることが不可能であつた。
電子顕微鏡的切片法,すなわち超薄切片法における最初の考案は包埋剤について行なわれた。その包埋剤には,メタクリル樹脂がNewmanら(1949)1)により用いられた。さらに,それに基づく固定法,超ミクロトームおよびガラスナイフなどの考案が行なわれて,表1に示されるような第1期の超薄切片法ができた。さらに包埋剤の改良が行なわれた。メタクリル樹脂よりすぐれた包埋剤のエポキシ樹脂およびポリエステル樹脂が用いられた。そこで第2期の超薄切片法ができた(表1)。この方法が現在広く用いられている。また,組織化学の進歩に伴い,水溶性合成樹脂が用いられるようになつた。この樹脂は脱水剤だけでなく,包埋剤として用いられているものが大部分である。
電子顕微鏡が1939年末期より1940年初期にかけて市販されて以来,生物組織の内部構造を観察することが行なわれた。しかし,その方法には光学顕微鏡的切片法が用いられたので,約10年間にわたつて生物組織の内部構造は電子顕微鏡で観察されるにいたらなかつた。それは包埋された組織片が電子顕微鏡で観察される切片の厚さに薄切できなかつたためである。すなわち,50〜80kVの加速電圧の電子顕微鏡では切片の厚さが0.1μ以下であるため,光学顕微鏡的切片法におけるパラフィン,セロイジン,カーボワックスなどの包埋剤ではその厚さの切片を得ることが不可能であつた。
電子顕微鏡的切片法,すなわち超薄切片法における最初の考案は包埋剤について行なわれた。その包埋剤には,メタクリル樹脂がNewmanら(1949)1)により用いられた。さらに,それに基づく固定法,超ミクロトームおよびガラスナイフなどの考案が行なわれて,表1に示されるような第1期の超薄切片法ができた。さらに包埋剤の改良が行なわれた。メタクリル樹脂よりすぐれた包埋剤のエポキシ樹脂およびポリエステル樹脂が用いられた。そこで第2期の超薄切片法ができた(表1)。この方法が現在広く用いられている。また,組織化学の進歩に伴い,水溶性合成樹脂が用いられるようになつた。この樹脂は脱水剤だけでなく,包埋剤として用いられているものが大部分である。
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