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実験講座
軸索流の中枢神経線維結合研究への適用
著者: 川村祥介1
所属機関: 1岡山大学医学部第三解剖学教室
ページ範囲:P.67 - P.72
文献購入ページに移動脳の働きは多くの神経細胞の有機的な連なりからなつていて,その働きを理解する上で個々の神経細胞もしくは機能的細胞群が互いにどのようにつながり,どのような相互連結をもつかを知ることは不可欠のことである。神経解剖学領域においては,過去一世紀以上にわたり脳の組織切片からそのつながりを解明しようという努力が続けられてきた。ことに1950年代にNautaによつてもたらされた変性神経軸索の鍍銀法は,その後の変法とあわせて,この分野の研究に広く用いられ,多くの進展をもたらした。また電子顕微鏡の生物学方面への応用は神経解剖学の線維連絡の研究の面でも多くの貢献をもたらしている。しかしながら,長行線維の連絡において変性法という神経細胞の病理的現象に立脚したものは,とりわけ脳深部に起始をもつ細胞の線維結合を研究するうえでは,他の部に起始をもち損傷部を単に通過するものと真にその部から発するものとの弁別は不可能であり,しかも用いる方法が変性変化を敏感にとらえるほどこの意味における所見の誤りの危険が増すという矛盾に遭遇する。
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