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文献詳細

雑誌文献

生体の科学26巻3号

1975年06月発行

文献概要

特集 細胞表面と免疫 総説

オリゴ糖鎖と免疫現象

著者: 入村達郎1 大沢利昭1

所属機関: 1東京大学薬学部生体異物研究部門

ページ範囲:P.210 - P.219

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 はじめに
 動物細胞の表面には複合糖質が多様な形で存在していることは,今日広く知られている。糖残基は細胞膜では外側の表面のみに存在しており,細胞内で合成されたタンパクが細胞外へ分泌されたり1),細胞膜の外側表面に露出したりする過程2)に糖残某の付加が関与しているとする考えもある。結果として,細胞と外界,すなわち他の細胞や各種のリガンドとの相互作用に,糖分子がきわめて重要な役割を果たしていると考えられる。このような複合糖質のうらで,細胞膜の基本的な構成成分の一部となつているのはオリゴ糖鎖をもつ糖タンパク質と糖脂質である。構成成分となつているということは,これらの分子が直接にあるいは膜のダイナミックな変化を介して,細胞外の情報を細胞内に伝達し細胞内代謝に変化を引きおこしうる可能性をもつていることを示している。とくに糖タンパク質には膜を貫いて存在することが知られているものがいくつかあり,このような意味で重要であると考えられる。さらに,これらの分子のオリゴ糖残某の構造は多様であり,血液型で代表されるような細胞表面特異性を決定する重要な因子となる。したがつて,細胞は複合糖質を通して(もちろん糖残基そのものは直接関与しない場合もあろうが)情報を与えあるいは受けとつてこれを細胞内へと伝えていると考えられる。

掲載誌情報

出版社:株式会社医学書院

電子版ISSN:1883-5503

印刷版ISSN:0370-9531

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