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文献詳細

雑誌文献

生体の科学26巻3号

1975年06月発行

文献概要

解説

生細胞の凍結—低温生物学の一課題

著者: 根井外喜男1

所属機関: 1北海道大学低温科学研究所医学部門

ページ範囲:P.239 - P.246

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 Ⅰ.低温生物学とは
 Cryobiologyという新しい学問分野がある。われわれは,これを日本語で低温生物学と訳した。cryoの語原は,元来ギリシャ語のkryosに発し,coldとかfrostという意味であるといわれる。古くはlow temperature biologyといういい方で使われていたが(とくに英国系において),この頃といつても,ここ10年ほど前から,cryobiologyという言葉がすつかり定着してしまつた。これに対応する低温生物学という日本語も,いまではだいぶ普及してきたとは思うが,その詳しい内容について,まだ一般の人が十分な理解をもつまでには至らない。筆者自身,機会あるごとに,低温生物学に関する研究の歴史や現状について,できるだけ多くの人に紹介してきたつもりではあるが,なんといつても若い学問分野であるから,関心を示す人はまだそう多くはない。
 低温生物学でいう生物学とは,狭い意味の動物学や植物学だけにとどまらない。広く生きとし生けるものすべて,さらに,それらから取り出されたもの,生命をもたない物質レベルのものまで,研究の対象としてとりあげられるものと理解していただきたい。したがつて,低温生物学は,医学,薬学をはじめ,農,林,水,畜産領域から工学の一部をも含むもので,いわゆる学際的というか,広い範囲にわたる境界領域を占めるところの,しかも比較的近年発達した新しい学問分野なのである。

掲載誌情報

出版社:株式会社医学書院

電子版ISSN:1883-5503

印刷版ISSN:0370-9531

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