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文献詳細

雑誌文献

生体の科学26巻4号

1975年08月発行

文献概要

講義

電子顕微鏡で観察されたウイルスの構造

著者: 野々村禎昭1

所属機関: 1東京大学医学部薬理学教室 2

ページ範囲:P.359 - P.371

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 今日はウイルスの,とくに電子顕微鏡でみられた構造についてお話しします。まず歴史的な背景についていくつかのことを述べ,ウイルス構造の基本について少しばかり触れて,それからネガティブ染色でみられたウイルスの電顕写真をおみせしましよう。これらの電顕写真は我ながら美しいものなのですが,これはウイルス粒子そのものが実に美事な構築物だからなのです。そのあとで少しばかり共同研究者のKenneth Richards博士と私が最近やりました,バクテリオファージの頭の中に詰め込まれ,包み込まれているDNAについての研究のお話しをして,最後にラムダファージのカプシッド(殻)構造決定に関連した最近の研究のお話しをしたいと思います。
 私は最初のウイルスの電顕写真がとられたときのことを知つているような老人です。そしてアメリカ人なので,つい聴衆の皆さんにはききなれていないアメリカ的表現を使つてしまうことを許して下さい。さて,初期のウイルス粒子の電顕写真は小さな球状の塊(blobs)に過ぎませんでした。この言葉の意味は境界がはつきり区別できないような種類の構造のことです。いいかえれば構造といえるようなものをほとんど示していなかつた。ともいえましよう。このような事態は1944年にRalph Wyckoff博士と私がシャドーイング法を導入したことで改善されました。この方法はウイルスの三次元的外観をはつきりと示してくれたのです。

掲載誌情報

出版社:株式会社医学書院

電子版ISSN:1883-5503

印刷版ISSN:0370-9531

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