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特集 光受容 総説
光受容の生理学—とくに視細胞電位について
著者: 村上元彦1
所属機関: 1慶応義塾大学医学部生理学教室
ページ範囲:P.41 - P.51
文献購入ページに移動 Brownら1)により温血動物のERGの中から視細胞電位が分離され,ついでMurakami & Kaneko2)により,冷血動物のPⅢが視細胞層から発生するdistal PⅢと,それよりも中枢側で発生するproximal PⅢとに分離されたのは,かれこれ10年ほども前のことになる。distal PⅢは,もちろん多くの視細胞の電気活動を細胞外で記録したmass responseである。それまで脊椎動物の視細胞も,無脊椎動物の大多数の光受容細胞と同様に,光によつて外節部が脱分極するものと漠然と考えられていた。もしそうならば視細胞電位の細胞外誘導記録の極性は外節末端側が負となるはずであるのに,事実はこれと全く逆で,distal PⅢの極性は外節末端側が正であつた。これは脊椎動物なら冷血でも温血でも同じである。この極性の矛盾を説明しようとしてずいぶん奇妙な仮説が提出されたりしたが,根本的理解を得るには,ぜひとも細胞内誘導をしてみて,光によつて果たして脱分極するものか,あるいは過分極するのかを直接観察する必要があつた。この試みは多くの研究者によつて相続いで行なわれ,実験された動物では例外なく,視細胞は光によつて過分極することがわかつた。それ以後の視細胞の機能に関する研究はめざましく発展し,視細胞電位発生のイオン機構,明暗順応機構,色覚機構等々の知識は急速に集積されつつある。これから最近の研究の成果を追つてみる。
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