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文献詳細

雑誌文献

生体の科学27巻1号

1976年02月発行

文献概要

解説

神経線維の興奮と複屈折性変化

著者: 渡辺昭1 寺川進1

所属機関: 1東京医科歯科大学医学部第二生理学教室

ページ範囲:P.66 - P.78

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 はじめに
 神経線維の興奮性膜は,厚さが100Åしかないので,電子顕微鏡でみても,興奮性の機構の手がかりとなるような構造41)を発見することは容易ではない。化学分析のために十分な量の膜物質を集めるのも難しい。そのうえ,膜の興奮性は,ニューロンの表面に少しの傷がついても,不可逆的に破壊される。したがつて,興奮性を研究するためには,生きたままの神経線維をていねいに剖出し,生理的塩類溶液の中で微小電極によつて膜電位を調べる,という方法がとられる。このような制限された実験条件のもとでは,興奮の分子機構についての研究も十分な進歩が許されないが,近年になつて,新しい実験方法の導入とともに,この分野にも新しい知見がもたらされるようになつた。中でも特筆すべきものは,細胞内灌流法3,39)と,光学的方法とである12)。細胞内灌流法は,方法の完成から,すでに10年以上を経過し,その結果も整理されてきた54,55)。光学的方法は,発足からまだ日も浅く,実験事実もまだ十分に集積されていない。しかし,従来,電気生理学的方法のみが主役を演じてきたこの分野に,これと比較しうる時間的解析力をもつ方法が登場したことの意義は大きい。光学的方法には,螢光法57)をはじめ種々の方法が細分されるが,ここでは,われわれがこの数年間行なつてきた複屈折性変化について述べる。その他の方法については綜説を参照されたい9,58,59)

掲載誌情報

出版社:株式会社医学書院

電子版ISSN:1883-5503

印刷版ISSN:0370-9531

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