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文献詳細

雑誌文献

生体の科学27巻3号

1976年06月発行

文献概要

解説

網膜のspreading depression

著者: 森滋夫1 冨田恒男2

所属機関: 1名古屋大学環境医学研究所第5部門 2聖マリアンナ医科大学第一生理学教室

ページ範囲:P.233 - P.240

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 Ⅰ.歴史的背景
 網膜を剥離しそのERGを調べようとするとき,剥離後15〜30分は何ら反応の出ないことがある。古河と塙(1955)5)はこれをretinal shockと呼んだ。また,網膜の視神経節細胞からスパイク放電を記録しているとき,原因不明に放電の頻度が増し,クライマックスに達したのち,しばらく全くスパイクの出現しないことがある1)。今日これらの現象は,これから述べるところの網膜に起きた伝播性抑制(spreading depression)として理解できるかもしれない。
 Spreading depression(以後SDと略す)の名はLeão(1944)19)によりはじめて記載された。実験てんかんを誘発するため,ウサギの脳表面に電気ショックあるいは機械的圧迫を加えると,その局所の脳波が抑制され,その抑制がゆつくり波紋状に半球全体に伝播することを観察し,これとてんかんとの関連性を指摘した。その後多くの研究者により種々の動物で追試され,Marshall(1959)23),Ochs(1962)32)がこれをまとめるに至つて,一応現象としては確立された。最近,Burešら(1974)4)がその後の報告を加え一冊の本として著わしている。しかし,今日なお,その発生のメカニズムについては明らかでない。

掲載誌情報

出版社:株式会社医学書院

電子版ISSN:1883-5503

印刷版ISSN:0370-9531

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