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特集 形質発現における制御 総説
組織発生における形質発現の制御—とくにニューロン回路の成立に関して
著者: 藤田哲也1
所属機関: 1京都府立医科大学病理学教室
ページ範囲:P.286 - P.298
文献購入ページに移動多細胞動物というものは私たち自身をも含めて,多くの細胞とその間をうめる細胞間物質からなつている。しかし,これらの細胞はランダムに積み上つた集塊をつくつているのでなく整然たる体制(organization)のもとに組織をつくり組織は統合されて器官を構成し,これによつて1個の生体が機能するのである。この体制をつくり上げるための制御を実現している物質的基礎は一体どのようなものであろうか,というのが以下に取り上げようとする主題である。
少なくともこの問題が個々の細胞と無関係でないことは確かである。指先の皮膚をつくる細胞は,自分自身とおなじ外胚葉から分れてきたものであつても手掌や口唇の皮膚とは違つていることを知つている,あるいは知らされている,のでなくてはならない。いわんや自分が神経系のニューロンやグリアでないことは明確に知つている。そしてそのように振舞う。
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