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解説
形態形成の理論—とくに細胞分化のモデル
著者: 鈴木良次1 真島澄子1
所属機関: 1大阪大学基礎工学部生物工学教室
ページ範囲:P.299 - P.305
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生物学において形態形成という言葉の定義は必ずしも明確でない。一般的には「のう胚形成以後の造形運動に基づく,組織や器官の,かたちづくりを意味する」1)とされている。現在,発生現象の分子的基礎はかなりわかつているとはいえ,解明されていない部分も多い。したがつて,なお,発生学独自の言葉によつて,形態形成の分析を行なうことの意味がある。たとえば,形態形成の場とか,誘因物質の濃度勾配などの概念が,その理論化の試みの中で有効に用いられている。
ところで,生物の発生過程で,構造タンパク質や酵素タンパク質の合成が,遺伝情報に基づいて行なわれていることはわかつている。また,遺伝情報はどの細胞にも同じように含まれている。しかも,細胞によつて異なつたものに分化していく。この理由は一体何か。それを説明するものとして,細胞内の特殊物質の分布が考えられている。つまり,特殊物質を含んだ細胞質という環境が遺伝子と相互作用して,いく通りかの可能性のなかから,特定の遺伝情報の発現を許すという考えである。この考えに従えば,同じような細胞の集りに対し,その中に特殊物質の空間的分布を与えてやると,それぞれが異なつた分化をとげ,全体として一つの空間的構造をつくり上げることになる。
生物学において形態形成という言葉の定義は必ずしも明確でない。一般的には「のう胚形成以後の造形運動に基づく,組織や器官の,かたちづくりを意味する」1)とされている。現在,発生現象の分子的基礎はかなりわかつているとはいえ,解明されていない部分も多い。したがつて,なお,発生学独自の言葉によつて,形態形成の分析を行なうことの意味がある。たとえば,形態形成の場とか,誘因物質の濃度勾配などの概念が,その理論化の試みの中で有効に用いられている。
ところで,生物の発生過程で,構造タンパク質や酵素タンパク質の合成が,遺伝情報に基づいて行なわれていることはわかつている。また,遺伝情報はどの細胞にも同じように含まれている。しかも,細胞によつて異なつたものに分化していく。この理由は一体何か。それを説明するものとして,細胞内の特殊物質の分布が考えられている。つまり,特殊物質を含んだ細胞質という環境が遺伝子と相互作用して,いく通りかの可能性のなかから,特定の遺伝情報の発現を許すという考えである。この考えに従えば,同じような細胞の集りに対し,その中に特殊物質の空間的分布を与えてやると,それぞれが異なつた分化をとげ,全体として一つの空間的構造をつくり上げることになる。
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