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文献概要
特集 遺伝マウス・ラット 総説
H-2 congenicマウスと細胞性免疫の遺伝制御
著者: 中尾実信1
所属機関: 1神戸大学医学部第三内科
ページ範囲:P.379 - P.388
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生体の免疫機構は種の進化と自然淘汰の歴史を背景にした系統発生と,受精に始まる個体発生との遺伝的な基盤の上に,さまざまな環境因子とのかかわりを経て作働している。したがつて,免疫学の研究に際してもphylogenicな展開と,ontogenicなアプローチが同時に行なわれることが望ましい。生命現象を研究対象とする生物学の中でも医学は究極的にヒトを対象とし,特別な位置づけを与えられているが,人道的に生体実験は行なうべきではない。それゆえ,系統発生の過程でヒトに応用可能な自然の法則性や疾病のモデルを解析していくことはきわめて重要である。
20世紀の後半,免疫学は急速な進展を遂げてきた。その蔭には1930年代におけるGorerらによる近交系マウスの開発と組織適合抗原の研究に関する歴史的な道程があつた。今日,遺伝学的に純化された近交系マウスによる正常個体の免疫機構の解析,NZBマウスを代表とする自己免疫病の疾病モデル,ヌードマウスにおける胸腺欠損個体の免疫機構の研究およびその特殊性の多彩な応用などは免疫学の背骨にさえなつている。このうち,NZBマウス,ヌードマウスに関してはすぐれた総説が多数あるので,本稿では主としてマウスの主要組織適合抗原(以下MHC抗原と略す)であるH-2系のcongenicマウスを中心とした最近の知見につき述べてみたい。
生体の免疫機構は種の進化と自然淘汰の歴史を背景にした系統発生と,受精に始まる個体発生との遺伝的な基盤の上に,さまざまな環境因子とのかかわりを経て作働している。したがつて,免疫学の研究に際してもphylogenicな展開と,ontogenicなアプローチが同時に行なわれることが望ましい。生命現象を研究対象とする生物学の中でも医学は究極的にヒトを対象とし,特別な位置づけを与えられているが,人道的に生体実験は行なうべきではない。それゆえ,系統発生の過程でヒトに応用可能な自然の法則性や疾病のモデルを解析していくことはきわめて重要である。
20世紀の後半,免疫学は急速な進展を遂げてきた。その蔭には1930年代におけるGorerらによる近交系マウスの開発と組織適合抗原の研究に関する歴史的な道程があつた。今日,遺伝学的に純化された近交系マウスによる正常個体の免疫機構の解析,NZBマウスを代表とする自己免疫病の疾病モデル,ヌードマウスにおける胸腺欠損個体の免疫機構の研究およびその特殊性の多彩な応用などは免疫学の背骨にさえなつている。このうち,NZBマウス,ヌードマウスに関してはすぐれた総説が多数あるので,本稿では主としてマウスの主要組織適合抗原(以下MHC抗原と略す)であるH-2系のcongenicマウスを中心とした最近の知見につき述べてみたい。
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