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文献概要
螢光の減衰過程を,ナノセカンド(10-9秒)の時間分解能で直接観測することができるようになつた1)。これは,数ナノセカンドの時間幅をもつた励起パルサーが開発されたことと,シングルフォトン計測の技術の進歩(主に原子核物理学の領域での開発が基礎になつている)による。この方法を用いれば,螢光強度の減衰過程から螢光寿命が求まり,また螢光の異方性の減衰過程から分子のミクロブラウン運動の相関時間が求まる。特記すべきことは,この相関時間の決定が,単一の溶媒条件下でできることである(従来の定常励起光による偏光解消法では──いわゆるペランプロットでは──溶媒の熱力学的パラメーター,温度か粘度,を変化させる必要があつて,結果の解釈に不確かさが生ずる2))。さらに,この方法は,螢光分子の励起状態での反応性のキネティックスや螢光分子をプローブにして分子あるいはその集合体の内部のダイナミックな性質も,今までより精度よく検知する可能性を与えているので,汎く分子生物学の領域でその応用が注目されてきている。ここでは,この新しい螢光測定法の原理の要点をまず概観し,つぎに私達が行つた応用例をあげながら,この方法の特徴や限界をできるだけ具体的に吟味していくことにしたい1)。
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