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特集 生体の修復 総説
心筋の修復
著者: 西江弘1
所属機関: 1順天堂大学医学部第二生理学教室
ページ範囲:P.86 - P.96
文献購入ページに移動心筋の修復には筋原線維,小管系膜構造やミトコンドリアなどの修復,細胞膜の修復,境界膜の接合変化とその修復,さらには壊死細胞の吸収と線維化による組織修復の段階が考えられる。心臓は周期的に収縮と弛緩を繰り返し全身の組織へ新鮮な血液を送り出している。心筋細胞自身,血流を遮断して酸素欠乏を起こさせると種々の障害を引き起す。一定時間以上,酸素欠乏状態が続くと心筋細胞は不可逆性変化をきたして壊死に陥るが,吸収され壊死巣の線維化によって修復される1〜3)。心筋を切断したり細胞膜を破壊したりすると静止膜電位が消失するが,Ca2+を含むリンガー液中で数分以内に静止膜電位は回復し,再び活動電位を発生し収縮するようになる4,5)。この場合の回復は,心筋細胞間の機能連絡を担っている境界膜がCaイオン存在下で脱接合を起して,損傷細胞が健常部から切り離されて起ると考えられている5〜7)。
細胞膜に対する微小な損傷は膜構造内での修復,すなわち"sealing"あるいは細胞表面での"plug"形成により修復される8〜11)。筋線維内で筋原線維数の増減や個々の筋原線維の肥大あるいは細小化が起り得ると考えられるから,心筋の筋原線維レベルでの修復も同様な仕組みで起るかも知れない。本稿では筋原線維,その他の細胞内小器官レベルの修復については触れない。以下において,細胞膜や境界膜の修復,心筋の組織修復について述べることにする。
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