話題
日米セミナー「細胞の膜とカルシウム」
著者:
石川春律1
所属機関:
1東京大学医学部解剖学教室
ページ範囲:P.132 - P.135
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ロッキー山脈の麓の町,Boulderで,昨秋(1976年)9月12日から15日までの3日間,「細胞の膜とカルシウム—細胞機能のコントロールにおけるカルシウム」の主題で日米科学協力セミナーが開かれた。海抜約1600mにあるためマイルシティと呼ばれるDenver市から北へ車で1時間のBoulderはColorado大学の本部がある,いわば大学町である。ここに有名なK. R. Porter教授らの分子・細胞・発生生物学研究所がある。10年前の1966年9月,奈良において,日本側浜 清教授,米国側K. R. Porter教授の世話で,細胞の膜,とくに小胞体について日米セミナーがもたれた。昨年はちょうどその10年目に当たる。両教授の間で再び同様のセミナーをもちたいと希望が出されていたが,幸い日本学術振興会および米国のNational Science Foundationの採択により実現するに至った。
カルシウム(Ca)が関与した細胞機能のうち,筋収縮におけるCaの調節的役割については分子レベルまで解明されている。これには,江橋節郎教授ら日本人科学者の貢献が非常に大きい。他の細胞のいろいろな細胞機能もCaにより調節されていることが明らかになってきている現時点で,このような総合的な討論の場がもたれたことの意義は大きい。